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十六
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ゼイゼイとなかなか収まらない呼吸を繰り返しながら、ヨシキはベッドに横たわっている。
互いの汗や体液で身体は汚れ、これ以上ないほどにシーツは乱れてベッドに貼りついていた。
いまだ繋がったままの場所から、ドクンドクンと鼓動にも似た音が聞こえてくる。
どちらのものかわからない、それぐらい一つになっている・・・月と兎
ヨシキはトロンとした目で私を見上げると、まったく力のはいらない手で腕を叩く。
「あんた・・・どんだけ男を抱いてきたの。壊れるかと思った・・・。」
「それはこっちのセリフだ。そっちこそ、何人と寝たんだ。」
「何人って・・・片手におさまるくらいだよ。女は両手両足以上だけど。」
コールタールのように粘度の高いどす黒いものが全身にまわりはじめる。
さっきまでの昂揚感が塗りつぶされていくようだ・・・忌々しい。
「正直SEXはもういいかって思ってたとこ。SEXだけじゃないな・・・全部がもういいと思った。
死ぬならそれもいい。
さっき気が狂うかと思うくらい気持ちよくて、あんたの名前を呼んだときさ・・・。」
肩甲骨から腰にかけてゆったりと両手を上下させて私がちゃんと存在していることを確かめている。
汗で額にはりつく前髪を脇にどかせて綺麗な額に口づけた。
「死ぬのは嫌だなって・・・。もっと生きていたいって・・・。」
「生き続ければいい。」
「簡単に言うね。俺は生まれる場所を間違った。」
「じゃあ、正しい場所にいけばいい。」
大きな目が見開かれる。気だるい色を乗せた瞳が揺れている。
当たり前のことを言ったまでだ。日本語を間違ったのだろうか。
「それはどこにあるのかな。今居る場所じゃないことはわかっているけど、何処かにあるんだろうか。」
「バカなことを・・・。兎は月と共に有ると決まっている。
ヨシキの正しい場所は私だ。私がヨシキの正しい場所であり、共に生きることが真理だ。」
「何言って・・・。」
「死んでもよかったのに、嫌だと思ったのだろう?私の名を呼んで気が付いたのだろう?
私はヨシキを連れて行く。緑の屋敷に。」
「緑の屋敷・・・。」
「ああ、庭を眺めることが生きがいだった爺さんがもっていた家だ。こじんまりとしているが、周りは森に覆われている。その森には入ってはいけない。トラップだらけだからな。見た目は田舎の別荘みたいな姿だが、狼たちが守っているから甘くみるとしっぺ返しを食らう。
だが庭は最高だ、好きな花を言ってくれれば植えさせる。」
ヨシキはカタカタと震えて泣き出した。ぽろぽろと涙をこぼし子供のように。
手の甲で涙をぬぐいながら嗚咽を漏らすまいと唇を噛んだ。
「どうしたのだ・・・わけがわからない。」
「う・・うえて・・・いい?」
「何の話だ。」
「俺、植物園に・・・就職でもして・・・枯れて死のうかなって・・・おも・・てて。
ヤクザはいやなんだ・・・花や木と土に囲まれていた・・い。だから、コウゲツが言ったことにびっくりして・・・本当に正しい場所なのかもしれないって・・・泣けてきた。」
なんだ・・・この生き物は。
男?女?いや・・・何でもいい、これは俺のものだ。
ズクンと下半身に血流が流れ込む。
「こ・・・う?」
受け止めるように内壁が蠢き始めた。
「おっきくなった・・・俺のこと・・・ほしい?」
「・・・・・。」
「俺はアンタが欲しい・・・どうしよう。このままコウと生き続けるのと同じくらいに、今ここで俺を殺してほしい・・・。俺の最後はアンタと一緒がいい・・・なんだろうな、バカが本当のバカになったの・・かな。」
しがみ付かれる
キスを強請られる
私しか・・・見えていない茶色の瞳
殺してやろう!喰いつくしてやる!
求められるがまま、粉々になることを願って自分をヨシキになすりつけた。
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