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二十二
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「迎えねえ、どこに来てもらおうか・・・。」
もう少し詳しい話を聞きたいと小菅に告げると、折り返してきた電話で言われたことは「榊組長に逢っていただきます。」だった。
随分トントン拍子だね、と言ってやりたかったが我慢した。話しに乗るフリをするなら、トントン拍子を喜ぶはずだから。何事も思ったことと反対の反応をすればうまくいく、そんな気がして来た。
「とりあえず一度帰るよ。あまり変な格好も失礼だろうから。本家には自分で戻る。」
「いや・・・しかし。」
「いいじゃないか。しっぽりドライブがてら帰るから。」
小菅はそれ以上何も言わなかった。手間が省けた、そのぐらいの考えだろう。
結局ここに連れてこられてから3日。俺はダラダラと過ごし、ベッドとバスルームの往復以外ほとんど動いていなかった。
食事は適当にルームサービスを頼み、有料チャンネルで映画を見たり昼寝をしたりとダメ人間のような時間の過ごし方だ。クリーニングに出して戻ってきた衣類は着ることなくクローゼットにぶらさがったまま。
下着すら身につけずバスローブを羽織っただけというだらしなさだ。
午前中に出かけ夜に戻る皓月は何も言わず、帰ってくるなりバスローブの中に手をもぐりこませる。
飽きることなくSEXを繰り返し、少しだけ思い出したように何かを食べ、眠る。
「だいぶ私が移ったようだ・・・。」
抱き寄せられ、首筋に鼻を埋めた皓月がそんなことを言う。
「どういう・・・意味?」
「私がつけている香りと同じ匂がするようになった・・・。」
皓月の香り、それは自分のためにブレンドさせたという香水でよく似合っている。シャープでキレがあり、どこか華やかなその香りを纏い身に着ける黒い服と相まって、実に皓月らしい。
移ったとしても絶対同じ香りであるはずがない。
そうだとしても、同じ匂だと皓月が思うなら、それでいい。
「明日は戻るのか?」
「そうだね。菱沼と逢った時と同じ格好じゃ、あまりにバカすぎるよ。榊に逢わなくちゃいけないから。」
「家まで送らせる。」
「助かるよ。」
左の耳たぶを人差し指と親指で挟みこみ、じっと見つめている。
「この穴はまだ開いているのか?」
ピアスの穴か。
「あいてる、そういや何もつけないで出かけたんだな、俺。」
皓月はポケットから小さなスエードの袋をとりだし巾着の紐を解いた。中からでてきたのは青い石がついたシンプルなピアスだ。不規則にカットされた表面が角度によって色や形を変える、なかなか洒落たものだ。
それを左耳にはめ、満足そうに頷く。
「青い瑪瑙だ。思ったおり、青はよく似合う。」
そんなことを言われると急に恥ずかしい気分になって顔をそむけた。
しっかりと抱き込まれ、耳元で囁かれる。
「それはプレゼントだ。そしてGPS発信機が組み込んである。いつ何かあってもすぐに見つけられるようにという備えだ。常に身に着けているように。
もちろん、これで私から逃げることが不可能になったということだぞ?」
逃げる?ばかなことを・・・。
「皓月が俺に嫌気をさして逃げ出すことがあるかもしれないけど。俺はないよ、絶対に。」
「なぜそんなことがわかる?」
「わかるから・・・これだけは絶対だ。」
「言ったはずだ、最初で最後の男だと。」
肩からすべるようにバスローブが落ちていく。
目を細めて俺を見詰める皓月の瞳がトロリと波立つ。スイッチが入った合図・・・まもなく唇がおりてくるだろう。
俺は何も知らない。名前だって本名じゃないかもしれない。誕生日も家族のことも・・・何もかもが知らない事ばかりだ。
でもなにも不安に思わない、知りたいとも思わない。
目の前の、この男が自分を欲している・・・それだけで充分じゃないか・・・。
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