アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
三十三
-
「滞りなく順調に進んでおります。」
何が滞りなくだ、まったくもって予定どおりに進まないこの事態をどう考えるのだ。
ギロリと睨み見据えても、チャウはいつものように怯えることなく静かに頭を下げるばかり。
ヨシキを権田の所に残し、自分だけ香港に戻るのは後ろ髪を引かれる思いだったが事が事だけに仕方がなかった。
一人で戻ることを告げるとチャウは期待をこめた目で私をみた。飽きた、私がそう言うのを待ち構えている。馬鹿馬鹿しい、飽きる飽きないの問題ではないのだよ、ヨシキの存在は。
「ホテルの部屋はこのままキープしておくこと。こちらに迎えにくるまでだから長くはかからない。」
裏切られた期待感に憮然とした表情を隠そうともせず、チャウは頷いた。
この頃からチャウの動向には目を光らせていたのだ。
明らかに、この男の腹の中は一物でパンパンになっている。私に喰らわせるつもりか?雑魚が何を企んだところでママゴトでしかない。
大龍の屋敷に報告にきて3日。せいぜい1時間で終わる事がずるずると引き伸ばされ、あげく昼夜とわず宴が催され女達が横にすり寄ってくる。
以前なら義理で抱くことも可能だったが、ヨシキを知ってしまった今、どんなに綺麗な女であっても物体でしかない。
女に囲まれた私を大龍は面白そうに眺めていた。好きな者をくれてやるぞ、身を固めて一族の安泰を確かなものにしたらどうだ?心にもないことを言い続ける大龍。
私の一族の血の繋げ方を知っているというのに、戯言の数々は多くの疑念とその先にある確信に辿りつく。
私を留め置いて、その間に何かを仕込んでいる。
考えられるのは逃げた香霧の敗者復活だが、今回の為体をみれば復活させるつもりなど更々ないはずだ。だが・・・香霧の部下達はそれを信じ、最期のチャンスを与えられたと行動する。
香霧は充分わかっているはずだ。自分の命運が尽き、この世に残っても惨めであり続けることを。
銀鈴・・・閃か、彼が傍にいれば生きることは可能かもしれない、しかし今はいない。自分を逃がすために命を落としたと思っているはずだ。
となれば、最期は私に一矢報いてからこの世を去るつもりだろう。
私は香港、香霧は日本・・・残してきたヨシキ。
あまりに単純で愚かな一矢ではあるが、実現したら私は一生空虚を抱えて生きることになる。香霧が自分の為に鳴る鈴を失ったのと同じように。
香霧にとっては大龍の次を誰が譲り受けようが関係ない。あるのは私への恨みのみ・・・。
ふん・・・チャウめ。
大龍にヨシキの存在を耳打ちしたのはお前だな?
香霧との争いに勝ち、名実ともに次期大龍になる私。
目障りな兎を香霧が始末してくれれば好都合。怒り狂って私が香霧を嬲り殺そうと、一族を根絶やしにしようが問題は何もない。恐怖が轟き誰もが闇夜に輝く満月を見上げる。
チャウのシナリオはそんなものだろう。
愚かな男だ。
そんなことに私が気付かないと?それと一つ忘れていることがある。
権田を見くびりすぎだ、あの組長と桜沢・・・そして斉宮を。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
34 / 75