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三十五
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跡を辿られるのを避けるには?現代においては文明の利器に関わらないことだ。
銀狼を呼ぶには?接触の悪いテーブルランプを何度かカチカチさせるだけだ。
灯りがつかなくても、煌々と灯ろうが銀牙は忍び込んでくる。
私の求めはこのなんてことのない照明器具によって叶えられていくのだ。アナログこそが現代社会においての最高の自衛といえよう。
ネクタイを緩めていると、いつもの通り口から一人の男が現れた・・・若いな。
「代理か?」
「白牙にございます。」
なんとなく権田の屋敷にいた田倉という男を思い出した。
言葉少なに意志を伝える術が一緒だ。銀の父、そして息子は白い牙か・・・。
「電話をかけたいが、チャウの手によるものはいらん。機種はまかせる、一台用意してくれ。
日本の状況は?」
「兎の存在は・・・防ぎようもないくらいに多数の穴から漏れ出ました。兎という言葉が一人歩きしています。間違いなくお守りしていると閃からは伝え聞いておりますので無事ではありますが、出国が厄介かと。」
「ふん。」
チャウめ・・・。いったい何の権利があってそんなことをやってのけたのだ。
それほどまでにヨシキの存在が気に入らないと?男だからか?
私に従う影の男としての地位固めか?
あまりに小さい。そしてそれに煩らわされる事に腹が立つ。
「私の側近を一新する。現状のチャウが築いた組織は信用ならないからな。いよいよ銀狼の出番が来たということだ。
つねに行動を共にする男が3人。それと情報部を強化したい。今の人員に加わる人選をしてくれ。
チャウが握っている情報は金とルート、取引先の委細だからどうということはない。私の頭にも同様のものが入っている。
緑の館の人間はすべて解雇。森のトラップを含めチャウがすすめている手直しをすべて掌握しろ。
どのみちチャウがこの先を見届けることはない。
渋る人間にはそう伝えろ、大龍の怒りにふれチャウは塵になったとな。」
「チャウは知りませんが、狼は随分前から潜りこんでおります。各方面の掌握にそれほど手間はかかりません。確実に安全な回線をご用意いたします。ご安心を。」
全てにおいて抜かりなしか・・・。
私がこまめに携帯を変えるのは側近たちが信用ならないからだ。外からの探りに用心深いと思われてきたが、一番目を光らせてきたのはチャウ達。
「慌ただしい動きになるが、万事整えてくれ。」
「かしこまりました。それは・・・チャウに渡すのですか?」
「最後の引導くらい渡してやろうかと思ってな。主人の務めだ。」
手のひらの中の小さなピルケースをコイントスのように投げあげキャッチする。
白牙はそんな私の姿を見た後、一礼し姿を消した。
さてと・・・新しい携帯が届くまでの間に片付けてしまおう。
自分が全てを握って動かしていると勘違いした男に現実を思い知らせてやるか。
知る権利があるからな。
死ぬ前にちゃんと伝えてやらねばなるまい、そうだろ?チャウ。
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