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四十三
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「なにがどうなっているかわからない。」
「ナニ、ワカラナイ?」
「なんで桜沢が撃たれたんだよ。」
「ウタレ?・・・・ア・・・ソレ、ナイ。マダ・・・ニホンゴ・・・ナイ。」
「Shot・・・GUN。撃つイコールショット。」
プライベートジェットのソファっぽいイスに並んで座っている、さっきの男と必死に会話しようとするのに、互いに歯痒い思いだけが募る。全然伝わらない。今度は筆談を試した。
「何故?襲撃。誰?」
「香霧」
「何?」
「香」
ああ、三番目の男か。でも皓月を狙うならわかるけど、なぜ俺なわけ?
まったく心当たりがない。
「何故?私?」
「兎」
兎だから?確かに俺は皓月の兎だよ、でもだからって三番目の男が俺を狙う意味がわからない。皆目見当もつかないし、それに会話が成立しないからこれ以上聞き出すことも不可能だ。
「くそっ、桜沢・・・。」
「モウマンタイ」
それって・・・日本人にとっては真剣に受け取れない言葉じゃないか。お笑い芸人主演映画の中で言葉がわからない主人公にされたアドバイスだ。何を言われても「モウマンタイ」だけ言っていれば大丈夫ってやつだ。
サラサラと筆談に使った紙にも書かれる。
「無問題」
問題アリと言われている気分になって頭を抱えた。肩をすくめた男は席をたち、少しして両手にカップをもって戻ってきた。
「coffee」
何もないよりはマシだ。有難く受け取って一口飲む。
いい香りが少しだけ気持ちを穏やかにしてくれた。
味わいつつゆっくり飲み、カップの中身が半分くらいになった頃、耳に聞こえているジェット音がモワっとして時間差のように遅れて聞こえ出す。
窓の外を見ようとするのに、やけに瞼が重くて目をあけているのが難しい。
あれ、なんだ・・・眠いのか・・・ひどく眠い・・・ひどく・・・
引きずり込むように強烈な睡魔は俺の意識を簡単に奪っていく。
抵抗できないまま、深く深く沈んでいく自分を止める術はなかった。
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