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五十九
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「緑湖の居場所は?」
「女のところです。今頃のんびり襲撃の報告を待っているでしょう。」
「やつの屋敷には?」
「5人いかせております。始末はついているかと。」
「清掃車は?」
「父が仕切っておりますゆえ、問題はありません。」
「金庫番は?」
「GOサインをだしました。この瞬間にも大金が各方面に流れているはずです。」
白牙と二人、緑湖のもとに車を走らせていた。『皓月の名を轟かせろ』と言ったヨシキを思う。
自分の迂闊さと脇の甘さに忸怩たる思いだ。あんな簡単に敵を懐に呼び込むとは・・・。
「咎を受けるべきはわたくし達にございます。」
「お前たちだけに非があるとは思えんぞ、自分の甘さに腸が煮えくり返る。」
もう次はない。悪ふざけの度が過ぎた老人には逝ってもらうしかないだろう。こう面倒をかけられては介護してやる気にもなれないのだから引導を渡してやるほうが互いの為だ。
「わたくしは、あの方を見くびっておりました・・・。まさかあの状態で月光様に喝を入れる気持ちの強い方だとは正直思っておりませんでした。」
まったくだ。私の横っ面を叩いた人間は後にも先にもヨシキだけになるに違いない。
「失礼ですが、月光様に何を言われたのですか?」
「イロの足一本ぐらいで狼狽えるな、一本ぐらいくれてやる。機を逃すな、大龍になってこい。
誰が洋服屋をキャンセルさせた?誰がその時間に面会をねじ込んできた?まったく・・・あの状態で私に道を示すとは。ヨシキを見くびっていたのは私の方だ。」
「月光様とヨシキ様は、狼が命をかけてお守りいたします。」
「ヨシキは言った。『誰かの命を踏み台にしてまで生きる必要があるか?』
私は下の者が盾となることに何の疑問も感じていなかったし、これを言われた時は戯言だと思った。
とんだ甘ちゃんの考えだとな・・・。
しかし私の強いてきたことはとんでもないことではないか。
ヨシキが・・・足どころか命を失ったら、私はどうすればいい?ヨシキの命を踏み台にして生き残って、その後私は何を目指して生きろというのだ!」
ダッシュボードを叩き続ける私を見て、白牙は車を止めた。
柔らかく、しかし強い力で私の手を握り、打ち付ける動作を封じ込める。
「月光様・・・お気持ちはわかります。しかし気をしっかりお持ちください。今やるべきことは緑湖と大龍御仁に逢うことです。一秒でも早く済ませて、ヨシキ様のもとへ駆けつけることです。
私は月光様の頬を打つ度胸はございませんので、どうか聞き入れてください。」
そうだ・・・憎き奴らを叩きのめせばいいだけの事、それが済めばヨシキの元にいける。
イッテラッシャイ・・・そう言われた、次はタダイマを言えばいい。
「・・・大丈夫だ。片を付けてやる、後悔を胸に死んでいくがいい。」
白牙は小さく頷くと、再び車を走らせた。
今日の私は残虐の限りを尽くしても足りないほどの怒りを溜め込んでいる。
私の歩みの後ろは血が川のように流れるだろう。
・・・自業自得だ、緑の水を朱に染めてやる。
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