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六十 (注 殺し場面があります
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緑湖の女は高層マンションに部屋を与えられていた。そこにはすでに狼の一団が雪崩れ込んだあとで、緑湖はダイニングチェアーに縛り付けられ、女は拘束された状態で床に転がされていた。
全ての窓は閉められ、カーテンがひかれている。冷房の効いた部屋は実に快適だ。
「これはこれは、私との時間を忘れたのかな。まだここに居るとはね・・・。痺れを切らして迎えにきましたよ。」
「無礼な!いきなり何の真似だ!」
「こんなに涼しく快適だというのに、何故汚い汗をかいているのかな?」
「無礼者が!!!」
唾を飛ばしながら大声で喚いているが問題はない。高級マンションは防音が施されている。喚こうが怒鳴ろうと聞こえるわけがない。
「大龍に何を囁かれたがしらないが、愚かだな。まずい判断ですべてが無になろうとしているぞ。
とんだ人生じゃないか、緑湖。」
「大龍は関係ない!」
「どうでもいいですよ。あのモウロク爺のことなど、このあと引導を渡しに行くつもりです。だから何を吹きこまれたか知らないが、それが実現することはない。
香霧を見ただろう?いくら地上を覆う霧であったとしても、天空から見下ろす私に敵うはずがない。
夢を見させた大龍には苛々する。
『月はいかん、湖の水で香港を飲み込むのはどうだ?』そんな甘い言葉で釣られたか?」
「な・・・っ。」
「お前はその潤沢な資金を武器に世を渡ってきた。大龍でさえ、その湖に欲をかき何かと声をかけていたようだが、私はそのようなまどろっこしいことはしないのだよ。
お前は死ぬまでに3つの後悔を背負ってもらう。」
「なにを!助けてくれ!あれは大龍に言われて仕方なくなんだ!助けてくれれば欲しいものをやる、女でも金でも、欲しいだけやる!」
床にいる女はギャーギャー喚きながら拘束から逃れようとのたうち回っていた。どうして、こんなモノに自分自身を突っ込めたのか今となっては疑問でしかない。
ヨシキの白く美しい身体とは大違いじゃないか、大口をあけて喚く姿は醜いだけだ。
あのような口に自分の唇を重ねることなくヨシキに巡り合えたことに感謝した。
その美しい身体を粉砕したのはこの男だ・・・許さない。
上着の下のホルダーからHK USP Tactical を取り出しサイレンサーを装着する。女の額に照準をあわせ迷うことなく撃ちこんだ。
【プシュ】
女の後頭部から脳漿が飛び出し緑湖の膝下にべったりと散る。
わずか10秒にも満たないこの行動で、私の本気具合がわかったのか緑湖はガタガタとふるえだし、白くなるほど顔が青ざめた。
「ドイツ製は無駄がない。そこらで手に入る中国製の粗悪品とはわけが違うと思わないか?暴発でもして、自分が危険な目にあえば本末転倒だからな。」
緑湖は足元に転がっている女と汚れた足に目をやると、吐き気を催したのか頬がぶうと膨らみ唇をすぼめた。我慢せずに吐いてしまえばいいものを。
脳梁と反吐にまみれて自分の置かれた状況を憂いたらどうだ?
愚かな自分を嘆いてももう遅くはあるが・・・。
「これが一つ目の後悔。
自分の行いで、気に入った女がとばっちりをうけて死んだわけだ。間が抜けた音だ、サイレンサーを付けると炭酸の缶をあけたような音がする、そう思わないか?
いっそのこと防音などされていないボロ屋に女を囲っておけば、誰かが助けにきてくれたかもしれない。金があることが裏目にでたようだな。」
緑湖の股間のあたりが濃い色に染まっていく。脳みそと小便にまみれるとは、死に装束にしてはお粗末すぎる。だが、腐れ外道にはお似合いだ。
「二つ目の後悔。
お前は2年前になかなか能力の高い会計士を雇ったはずだ。アドバイスは的確で、すでに唸る程金があるというのに尽きない欲を満たすべく資金をさらに増やしただろう。
実はあの会計士、私の手の者だ。」
「な!なんだと!」
「秘密口座、権利書、証書、株、土地、パスワード、秘密、なにもかもすべて、そう全て全部。
今まさにこの瞬間、湯水のように金が方々に流れているというわけだ。何百もの企業の中を巡り巡って全ては私のもとに集まることになっている。
生体認証?問題ない。必要な場所だけ後でいただけばいい。」
「うわああああ!なんとうことを!この畜生めが!!!」
どっちが畜生だ、欲にまみれる男は、女が死んだときより金が無くなる事に強い反応をしている。
さて、もうひとつ絶望をやろう。
「最後、3つめの後悔。
すでにお前の家族は3代すべて抑えた。先に旅立ち、あの世でお前を待っているだろう。さて許してくれるだろうか?お前の浅はかな行いで人生を途中で終えることになったのだからな。」
「ど・ど・どういうことだ!」
「どういうこと?ありのままだ。私の命を狙った代償だよ。私が許すとでも?馬鹿馬鹿しい。
非情であることが大龍の本質だと知っているだろう。
私の命、そして私の命以上の価値あるモノにお前はとんでもないことをしてくれた。
3代で許してやっただけありがたいと思え。息子達が未婚でよかったな、被害が最小限で食い止められた。」
「ま、まさか・・・。」
「ああ、全員すでに死体袋の中だ。埋葬されることなく闇に葬る。」
「呪い・・・殺してやる!あの世から呪い尽くして、お前を狂い死にさせてやる!」
「言いたいことはそれだけか?」
「ぶっころす!ぶっころしてやる!絶対だ!」
「結構。」
【プシュ】
「一発で済ませたことに感謝してもらいたいぐらいだ。白牙。」
「はい。」
「この女のダミーは?」
「すでに空港にむかっております。」
「では清掃した後、旅立つ人間の部屋のように整えろ。
3日の旅ならせいぜい冷蔵庫を空にする程度だろうが、ぬかりのないようにな。」
「はい。」
「では行こうか、次だ。」
すでに室内の動きは慌ただしくなっており、狼の一団が役割をはたすべく働いている。
この女の名前で用意したチケットとパスポートで一人の女が旅立つ。帰りのチケットは3日後の日付。
しかし帰りは自分の身分に戻ったダミーが帰国する。
海外渡航したまま行方不明になる女が一人。
それが露見するのはいつになるのだろう・・・まあ、私の預かり知らぬことだ。
さあ、大龍。次はお前だ。
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