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七十 ♥
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相手の身体を見るのが久しぶりで、何度も重ねた肌だというのに直視できない。コウはローションを手に浴室に入ってきたから、それを見て自分の顔が赤くなるのを自覚した。
なんとなく決まり悪いというか恥ずかしく、居心地が悪い。そんな俺を見てコウは柔らかく微笑んだ。
「きゅうに可愛くなったな。私より年上のくせに。」
こういう時に年齢は関係ないだろうと思う。
両手を差し出されたので、それを握りゆっくり立ち上がる。泡立てたスポンジを渡しながらコウは嬉しそうに言った。
「洗ってくれるのだろう?」
何もしないよりはずっといい。やる事ができたとばかりに、コウの身体を泡だらけにしていく。以前と同様、筋肉が適度にはり弾力のある肌が懐かしい。伝わってくる体温は安心感を生み、この腕に包まれたいと願ってしまう。
上半身は問題なかったが足を洗うにはしゃがむか座るかしなくてはいけない。でも滑る浴室の中でその動作をするには勇気がいる。
俺の躊躇を感じたのかいきなりコウに抱きしめられた。
「ヨシキがいる、私の腕に中に。」
「う・・・ん。」
「待ったかいがあった。」
俺を抱き締めたままシャワーの湯をかけ始め、泡がどんどん消えていく。つるつる滑るコウの背中を撫でる。ようやく触れることができた。流れ落ちる湯がふいに止まり、コウの手のひらが尻におかれ不本意ながらビクっとしてしまった。
「大丈夫。」
なにが大丈夫なんだと言おうとしたら、キスで口が塞がれる。重ねるだけのキスは毎日したけれど、コウの舌は唇を這うだけで決して俺の口に入ってくることは無かった。子供みたいなキスしかしてくれない事にショックを受けたがあとで考えなおした。
キスだけで止まれるはずがない。そして先に進むことの危険に思い当たり、俺の身体を考えてのことだろうと思い直した。そうはいっても寂しい事には変わりない。
でも今は違う、なんの迷いもなく咥内に侵入してきた舌は思う存分這いまわっている。
ずっと欲しかった・・・。胸に降り積もる安堵は涙腺を緩める。
肩が震えたことに気がついたのか唇がはなれていく。頬に両手を添えられて言われた言葉。
「どうした?私の兎、目が赤い。」
そう言われて本格的に涙が零れはじめる。横浜のホテルでコウが言ったのだ、これと同じ事を。
「覚えていたの?」
「ヨシキのことなら全部覚えている。」
ローションの容器の先が後孔に差し込まれて、冷たい液体が流れ込んできた。
「あっ!」
「ヨシキ、私に掴まりなさい。」
首にしがみつくように促され、そのようにするとしっかり両足を抱え込まれ抱き上げられたことがわかる。そのまま湯船をまたぐようにして入り、ゆっくり湯に沈み込んだ。
俺の足を前に投げ出すように座らせるとコウは後ろから抱きしめてくれた。
お湯とコウの胸から伝わる温かさが心と身体にしみこんでいく。
「湯の力を借りようか。」
身体を持ち上げられ、俺はコウの足の上に乗せられた。脇腹から腹にまわった右手が下に伸びてくる。ツプと人差し指が差しこまれた。
「痛い?」
「んん・・・大丈夫。ちょっとびっくりしただけ。」
潜りこんだ指は緩慢な動きを繰り返す。いたわるようなその動作は快感とは別の悦びを与えてくれるからウットリしながら背中を預けた。
「ずっと避けてきたことを謝らなくてはいけない。」
「うん・・・わかっていたよ。」
「触れてしまえば止まらなくなりそうだった。長く見つめたら壊してしまうと思った。だから朝早く出て夜遅くに帰ることにした。眠っているヨシキを見て、落ち着かない気持ちのまま眠り一人で目覚める。
この生活は私にたっぷり仕事をする時間を与えたし、非情で冷酷になることの手助けになった。
すさんだ心と身体、それをもたらしたのは私の敵だ。すべてを黙り込ませればまたヨシキとの時間が訪れる。それを信じて邁進した結果、満足のいく状態にもっていくことができた。
名実ともに大龍となり、私は「凍月」と呼ばれている。」
「凍った月か・・・鋭利な刃物みたいだな。」
「そのとおり、不用意に近づけば身を切られる。」
ふう・・・と深いため息が俺の耳元におりてくる。
「やることがあってよかった。そうでなければ狂っていたかもしれない。今私の身体を巡っている安堵と歓びを見せてやりたいぐらいだ。
まるで子供のように・・・私は・・・。」
「わかってるよ・・・俺もだから。ずっとずっと待っているのに人間の身体はゆっくりとしか進んでくれない。気持ちはどんどん焦れていくスピードを増す。
不安が山のように積み重なって・・・ごめんな、俺コウを傷つけた。本当は疑っていなかったよ、でも不安だったんだ、確かめる術がなかったから。コウが泣くほど・・・ひどい言いがかりをつけた。」
ぎゅうと腕に力がこもり、背中に強くコウの胸があたる。肩口にキスをおとされ、もっとくっ付きたくなって頭を後ろに預ける。反った背中は中に埋まっている指の位置を変えた。
「んん・・・ぁ。」
遠慮がちにもう一本指が入り込む。丹念にほぐされていた後孔は抵抗なく指を飲みこんだ。
「あ・・・ふ。」
「あれは違う。悲しかったのは自分ではない、痛みや自分の身体であっても動かすことができずにもがいているヨシキに私が強いたことは酷いものだ。そしてそれは私が自分を制御しきれないという恐れが招いたことだ。ただでさえ不安ばかりのヨシキに私は触れられず、さらに追い打ちをかけた。
それを受け止めている・・・その姿に涙がでたのだよ。
あの日のことは思い出すたびに怖くなる。もし日本に帰ると言われたら自分はどうしていたのだろうと。」
「俺のこといらないって・・・。」
「違う、それは違う!」
「うん、わかっているよ、だからどこにも行かないって言った。どこで生きていけっていうんだよ。俺も想像して怖くなったよ。コウのいない所で生きることはできないから。」
指がグルンと中で動き、忘れかけていた快感の源に届いた。
「あ・・・そこ。」
「その声だけでイキそうだ・・・。」
しっかり勃ちあがった俺の分身は湯のなかで揺れている。俺とコウの身体の間に挟まれた熱は固くせりあがっているから、それを自分の中に取り込みたい。ひとつになりたい。
「もう大丈夫、挿れて。お願い。」
「でもまだ・・・。」
「大丈夫・・・どういう体勢がいいかな。ん、あぁ。」
指が引き抜かれることで生まれた刺激に声が漏れ出た。背中に当たっていた身体が離れていく。背中に何もなくなって何だか心細い。
コウは向かい側に移動してまた俺を身体に乗せる。
臀部を抱えられて水の力を借り簡単に体が持ち上がった。コウの首にしっかり腕を巻きつけ身体を浮かせる。
後孔に先端が触れると添えられた指に入口が広げられ、ゆっくりと潜りこんできた。
回した腕にだけ力を入れ、下半身の力を抜く。水に浮くような気持ちになると下半身が弛緩していった。
すこしだけ引き攣れたような痛みはあるが、手術後の痛みに比べれば大したことはない。むしろ甘美でさえあって、入り込む熱を感じることができたことにまた涙がこみあげてきた。
しっかり根本まで入り、俺達は一つになった・・・。
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