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あ、レアな顔。目が飛び出そうなほど見開いて、口も半開きになっている。ここまで驚いている顔初めて見たかも。
「…ここ、荒太のバイト先だったのか」
奥から出て来たのは、白シャツにダークグリーンのネクタイ、黒のベストに黒のソムリエエプロンを身に纏った荒太だった。おお…なんか新鮮。
「な、なんでここにヨウがいんの…?」
「先輩のお気に入りのお店に連れて来てもらった」
いい仕事するわ、希子先輩。ほんっとフミ先輩とは大違いだよ。
「そ、そうなんだ」
「私知ってる!椎葉荒太くんでしょ?いやぁ〜眼福眼福」
「えっと、あの、すいません、面識ありましたっけ?」
「ごめんごめん!ないよ〜!ただ椎葉くん有名だからさ!」
「はぁ…」
浮かない表情を浮かべているが、どうせまた見当違いなことでも考えているんだろう。
「椎葉くんじゃん!ここでバイトしてるんだぁ!今度芽衣に教えてあげよっと」
なっ…!クソ、情報回してんじゃねーよ。一番厄介な相手に荒太のバイト先を知られてしまった。
どうやらフミ先輩も荒太のことは噂に聞いたことがあるようで、まじまじと荒太を見つめていた。
「あ〜いいなぁ…俺もイケメンになりたい…。っていうかここ今顔面偏差値高すぎじゃね?俺…はぁー………」
突っ伏せたフミ先輩に荒太はオロオロしていたが、希子先輩がその背中を叩いてからかっていた。
それから荒太のバイトが終わる一時間、仕方なく四人で飲んでいたわけだが、この美優って女はもう本当に鬱陶しい。
席順は、フミ先輩、美優、俺、希子先輩とカウンターに並んでいて、隣同士なのをいいことにやたらめったらひっついてくる。
そのたびに俺は置かれた手やら絡まれた腕やらをやんわりと外すわけだが、そろそろ我慢の限界が訪れそうだ。
灰里さんは、先程の俺と希子先輩の恋愛話や今の状況を見て、大体のことを把握したらしい。話が危ない方に傾きかけるとさり気なく話題を変えてくれる。
…それにしても。荒太、仏頂面過ぎないか?
荒太が灰里さんのように綺麗に微笑んで仕事している姿は想像できないが、いくらなんでもこれは無愛想すぎる。
とはいえ頼んだドリンクは美味しいものがすぐに出てくるし、手は動いているみたいだけど…。
11時になると、荒太は私服に着替えに行き、すぐに戻って来た。よし、早く帰ろう。
「すいません、俺ももうそろそろ帰ります」
「そうね、もうこんな時間だし。フミも帰るよ」
「え〜なんで、もう少し話そうよぉ!あ、今から芽衣呼んで遙と椎葉くんと四人で飲み直さない?」
そんな最悪な状況を作るわけないだろ、心の中でボヤいて断りを入れようとした時だった。
「行かない」
バイト中から無言だった荒太が一言ピシャリと言い放ち、灰里しんに「お疲れ様でした」と挨拶をしてスタスタと店を出ていく。
「…え、ちょっと荒太、待っ」
「何今の〜、超感じ悪い!もうこのまま二人でいいじゃん?」
美優が、荒太を追いかけようとした俺の腕を抱きしめ、上目遣いで見上げてきた。
お前なんかに構ってるヒマ無ぇんだよ。
「ごめんけど、本気で迷惑だから」
あえて目を見て言ってやった。手早く腕を引き剥がし、先輩に1万円渡して挨拶も程々に店を出る。
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