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side 遙
荒太が去った食堂で、俺は一人溜息を付いた。
なんだアイツ。破壊力抜群。
荒太を見つけた俺はとりあえず挨拶して、彼の前の席に座った。普通に挨拶を返してきて驚いたけど、何やら考え事でもしていたのか、相手が俺だと認識するのが遅れただけのようだ。
少しして、俺にされたことを思い出したのか、ハッとしたような表情を見せて、右に左にと視線が動く。これが可愛いのなんのって。
そしてだんだん俯いていき、顔が見えなくなったんだけど、耳が赤いことがバレバレだった。
それからはひたすら無視されるもんだから、一昨日のことをバラすとカマをかけると、首が捥げるくらいの勢いで顔を上げた。
頬はまだ赤くて、でも目は困惑したように開かれてて、思わず写真を撮りたくなるほど良い顔だった。
「ね、ね!ちょっと、今話してたの椎葉君でしょ~!」
「すごく仲良さそうだったじゃん!椎葉君もいつもと全然雰囲気違ったし~」
いいなぁ、と周りの女子が口々に言う。
あー……さっきのカオ、食堂にいた奴も見てんだよな。若干苛つく。いや、かなり。
「田中君、椎葉君に話しかけられてたよね?!なんて言われたの!」
「い、いや、僕は別に……。ごめんって言われただけだよ……。」
巻き込まれた田中。可哀想に……って俺のせいか。
「椎葉君謝ったりするんだぁ。」
「ごめんだって!可愛い~!」
「椎葉君はお前が全部悪い、って罪擦り付ける人であってほしい~!」
謝ったりするんだ、って。するだろ、人間だし。
最後の奴に至っては只のドMだ。荒太、お前最悪なイメージしか持たれてないぞ。
「ねぇ~今度ウチらにも紹介してよ!」
「お願い伊織君!!」
「…実はまだ俺も攻略中だから、友達になれてないんだよね。でも荒太は俺のだから、あげない。」
「椎葉君って男子相手にも心開かないんだぁ!可愛い~!」
「伊織君が変な言い方するから、禁断の恋みたいに聞こえちゃう~!」
「でもこの二人なら全然あり~!!」
目の保養だ、とかなんとか騒いでいるけど、別に俺は冗談で言ったつもりではない。
この日から荒太は、"怖い"から"可愛い"と言われるようになった。勿論裏で。この事実を知ったら、アイツどんな顔すんのかな。
でも俺が一番気になっているのは荒太のバイト先。
一昨日会ったときにバイト終わりだって言ってたし、あの辺にある店なんだろうけど。
アイツが笑顔で接客してる所なんて全く想像出来なくて、興味が湧いたのだ。
聞いても教えてくれないだろうけど、わざわざ探す気も起きない。
誰か知ってる奴がいたらいいけど、荒太の友達なんて知らないし。友達いねーのかよ、っていうのは俺の台詞だ。
とりあえず次バイトが休みの日、また拉致るか。
side 遙 end
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