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大学の最寄り駅に着く。
なるべく顔が分からないように、ヨウが貸してくれたマフラーに顔を埋めた。
「……おい、なんで後ろ歩いてんだよ。」
そんなの、目立つからに決まってるだろ。食堂で話していた時と同様、どんな場所にいてもヨウがいると視線が集まるのだ。
後ろを歩いていれば、俺はただの通行人Aにしかならない。
「……だから、お前目立つんだって。」
「……。そんな風にしてたら、俺のストーカーにしか見えない。」
「な!」
何故俺がそんなことをしないといけないんだ!どっちかっていうと、俺は纏わりつかれてる側なのに。
でも確かに、これじゃあまるで後ろから跡をつけているみたいだ。
「…じゃあ、もう離れて歩くから。」
「なんでそうなんだよ。隣歩け。」
「やだよ。」
はっきり言い切ると、ヨウは少し苛立ったような顔をした。
「うわっ……!ちょ、離せ!」
あろうことか俺の方に手を伸ばして引き寄せ、ぎゅうぎゅうと引っ付いて歩き出したのだ。
「なあ、やめろって!おい!」
「きゃ~ヨウじゃんおはよ~!椎葉君も一緒なんだねっ!」
げ。
最悪だ。周りの女子が反応し始めた。一人が声を掛けてきたのをきっかけに、どんどん寄ってくる。
「二人が一緒だと超目立つよね~!」
「ね!ほんとはさっきからずっと見てたんだけど、なんか話しかけずらくってぇ」
「そんなに引っ付いて歩くとか仲良いんだね~」
話しかけずらいなら一生そのまま話しかけるなよ!無視してさっさと大学に行け!
……と思っているものの、俺はずっと無言だった。ヨウもそんな俺を無言で見下ろしていた。
「っていうか、もしかしてその服ヨウのじゃない?!」
「あ~絶対そうだ!私見覚えあるもん!」
「「「昨日お泊まりしたの~?!」」」」
あー無理だ。気持ち悪い。仲良くない、ましてや知りもしない相手に囲まれてこんな質問攻めにされるとか無理……。
俺は人が苦手なんだ。頼むから、そっとしておいてほしい。
どんどん表情が固まっていくのが自分でも分かる。それなのに周りは気付いていないのか、キャッキャと盛り上がっていく。
「あーごめん。ちょっと俺ら今二人の世界だから話しかけないで。」
ぼー、としてきていた頭がヨウの言葉で覚醒した。何言ってんだコイツ。頭沸いてんのか。
「え~何それ萌える!w」
「仲間に入れてほしー」
「ほんとあのふたりの組み合わせヤバイよね!」
なんて笑いながら女子だけで会話するようになり、俺らに群がっていた集団は散っていった。気持ち悪いのも何とか収まった。
……頭沸いてんのか、なんて言ったけど、俺が嫌な顔をしているのに気付いて言ってくれたことくらい、分かってる。その場の雰囲気が悪くならないように茶化したことも。
今日はヤケに、ヨウの優しい所が目に付くな。
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