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side 遙
焦った。かなり焦った。
中庭で、ベンチに座ってぐったりとしている人に気が付いた。髪も服も体型も見覚えのあるもので、急いで傍に駆け寄り声をかけた。
ところが、こちらを向くことも無ければ返事もしない。
最近、荒太が俺を避けていたことは分かっていたから、無視でもされているのかとも思ったが、あの様子からそんな雰囲気は感じられなかった。
まさか意識が飛んでいるのか、と思って俯いている荒太の顔を下から覗き込むと、薄らとだが目は開いていた。少し安心する。
……顔を覗き込んだ時、何故かは分からないが、荒太はとても嬉しそうに笑っていた。
ぐったりとしているのに微笑むという、なんだか儚げな表情に、心臓が脈を打った。
しかし、ドキドキしている場合ではない。荒太は、顔面蒼白といった感じで、今すぐにでも病院に連れて行った方がいいような気がした。
目が殆ど閉じかけていたから、眠るように促す。とりあえず俺の家に連れて行こう。病院は……多分キツイだろうから、アイツを呼ぼう。確か月曜日は、アイツは仕事が休みだったはずだ。
タクシーを捕まえ、眠りに落ちた荒太を乗せて自分も乗り込んだ。家に向かっている間、俺はとある知り合いに電話を掛けた。
家に着き、荒太を所謂お姫様抱っこというやつでで部屋まで運ぶ。
多分これが一番荒太に負担の無い方法だ。
同じ男なのに全く重いとは感じなくて、飯を食ってるのか少し心配になった。
ベッドに寝かせて一息つく。先程と違い、顔が赤くなっている。
少し汗もかいているし、熱が出たのだろうか。
タオルで拭いてやっていると、インターフォンが鳴った。ヤツが来たのだ。
「折角仕事休みなのに~。」
「どうせ暇だろ。」
「酷くない?!」
この、やたらとテンションが高くてウザイのは、湖南 裕也(コナミ ユウヤ)。彼は父の友人で、医者をやっている。
荒太を診てもらおうと呼んだのだ。
裕也の職業が医者だということは、初対面の奴には全く想像出来ないだろう。こんな風に、テンションが高くて、チャラチャラしてて、適当という言葉が似合いそうなんだから。
でも彼は医療の世界では割と有名らしく、腕が良いらしい。
こいつの専門は精神科だ。しかし以前は内科に勤務していて、心理学を勉強し直して今のようになったらしい。
さっきとは打って変わって真面目な表情で、荒太の様子を見ている。
「荒太はどうだ?」
「ん~ただの風邪だね。ヨウの話ではさっきは顔が真っ青だったんだよね?それなら、寝不足で体が弱ってたんじゃないかな。クマも酷いから。」
「……そうか。さんきゅ。」
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