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なんとなく悪戯してやりたくなって、もう一度ぎゅっと手に力を込めると、驚いた荒太の声が聞こえた。
案外リアクション多かったりするよな。いつも大学では無表情なのに。
そろーっと、もう一度親指に手をかける荒太。
「ぶはっ。」
「…な?!」
ここで俺は耐えられなくなって、とうとう吹き出してしまった。本当、可愛いことするよな。
困惑したような顔で俺を見ていて、もう少し困らせたくなる。
実は結構前から起きていたことを伝えると、元々少し赤かった頬を更に赤らめた。照れたような表情をしたり、焦ったような表情をしたり、百面相している。
可愛いくてしょうがない。俺もさっきの荒太の行動を真似してみたくなった。だって、そうしたら多分、もっと色んな顔を見せてくれると思ったから。
俺も、なるべく荒太のように、娼婦のような雰囲気で迫るように心がけた。男を誑かす、悪い女。
俺には荒太のような儚さは無いから、正直女のようになんていうのは限界があるし、そもそも気持ち悪いんだけど。
荒太って結構耳に穴開けてるよな。今日は軟骨のところだけしかピアスをしていない。あと三つ、埋まっていない穴が寂しそうにしている。……俺のピアス、ここに着けたいかも。
俺のだ、という印の代わりに、後で着けさせよう。
勝手に心の中で決めて、満足する。
くすぐったいと言って手を振り払われたので、仕返しに腕が細いことをからかってやった。
本当に、荒太の腕は細い。手首なんて、親指と人差し指で作った輪よりも細い。寝たフリをして腕を掴んだ時に、確証済だ。
軽く力を込めれば、簡単に折れてしまいそう。
こんな弱々しい体で、いつも反抗的な態度を取っているんだよな。
ああ、なんか興奮する。
目が合って、俺を避けていた理由を問い詰めた。沈黙が続く。
荒太は目をきちんと合わせないまま、ポツリ、と話し出す。
俺のせいだと。酔っていた時のことは覚えていないと。
少し前までの俺なら、多分それを信じていたと思う。もし俺が荒太だったとしたら、こんな近づき方してくる奴なんか絶対無しだからな。
それでも、今の俺には確信があった。荒太は俺のことを嫌ってはいない。むしろ、自分から触ってくるくらいには好かれていると。……酔っている時だけじゃなくて、素面の時にもな。
さっき唇や耳に触っていたのは、寝起きでぼーっとしてたから、なんて言い訳をされたら、こしょこしょの刑にしてやろうと思う。
……ほら。今も、荒太は何かを誤魔化すように、顔を赤くして必死に言葉を紡いでいる。
いっぱいいっぱいなその様子は、むしろ俺への気持ちを吐露しているようだ。
素直じゃないな、ほんと。
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