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ガチャガチャ
洗面所に突っ立ったままでいると、鍵を開ける音が聞こえてきた。
ヨウが帰ってきたらしい。時計を見ると、十一時を過ぎている。
「……おかえり。」
洗面所のドアから顔を出して言ってみる。
「…ただいま。調子はどうだ?」
「さっきよりはマシになった。」
「熱、計ってみろ。」
ヨウは寝室に行って、ベッドの脇のテーブルに置いてあった体温計を手に取った。
やっぱり普通だ。普通に接してくれる。何事も無かったかのように。
「…何ぼーっと見てるんだよ。俺に計ってほしいのか?」
どうやらヨウを見てぼーっとしていたらしく、差し出してくれた体温計に気付かなかったらしい。
言いながら近づいてきたヨウは、俺の前髪を掻き上げて、おでこをコツン、と当ててきた。
「なっ、ば!!!」
何すんだばか、と言いたかったのだけど、驚いて言葉が出ない。
また何かされるのかと思って身構えたが、俺を見て悪戯そうに笑ったヨウは、すぐに離れていった。
……ちょっと残念とか思ってんなよ、俺。
リビングに行ったヨウに着いて行き、ソファーに座って体温計を脇に差し込む。
「食欲はあるか?無くても少しは食べないとだけど。」
「んー、あんまり無ぇかも。」
ヨウは冷蔵庫を開けて、どうすっかなー、と呟く。
もしかして、飯作ってくれんの?
「お粥とかなら食える?」
「……食える。」
本当は何も食べたくなかったけど、ヨウが作ってくれる飯には興味がある。
ピピ、と音が鳴って体温計を見てみると、三十七度二分だった。
元々体温が低い俺にとって、この数値は見慣れない。因みに俺の平均体温は、三十五度八分である。
「熱あるか?」
「微熱程度」
見せてみろ、と近づいてきたヨウは、俺の手から体温計を取る。
「結構下がったな。ここに連れてきた時は三十八度二分だった。」
「マジか。そこまで上がるの久しぶりだ。」
ヨウはそのまま体温計を直してくれた。
「まだ無理はするなよ。荒太、多分平熱低いだろ。」
「……何で知ってんの?」
「お前の身体、ヤってる時以外冷たいんだよ。」
「ゲホッゴホッ」
思わず噎せる。なんてことを言い出すんだ全く。
言葉が出ない代わりに、思いっきり睨みつける。
「赤い顔で睨んでも怖くねーって。お粥、すぐ出来るから待っとけ。」
全力で睨みを効かせたはずなのに鼻で笑われて、流されてしまった。
「チッ。……何か、手伝うことあるか?」
「大丈夫だから、大人しくしてろ。」
言われた通り、ソファーに座って静かに待つ。
ヤってる時、そんなに体温上がってんのかな……。
少しして、ヨウはお粥の入った小さい鍋とお椀を、食卓テーブルに運んできた。
ソファーから、食卓テーブルに移動すると、美味そうに湯気が上がるお粥が目に入る。
ヨウって料理も出来るのか。
「無理はしなくていいから、食えるだけ食え。」
お粥を少なめに掬ってくれたお椀を渡してくれる。気遣いめっちゃ出来るじゃねーか。良い嫁になりそうだなオイ。
どうやらヨウも、同じものを食べるらしい。少し申し訳なくなる。もっとがっつりしたものを食べたいだろうに。
「……美味い。」
程よい味付けで、楽に胃に入っていく。
思っていたよりも多く食べられた。
「ご馳走様。」
「お粗末様。」
食器洗いくらいは俺がやると言ったのだけど、断られてしまった。代わりに薬を渡される。
「ちゃんと飲めよ。」
「……買ってきてくれたのか?」
「いや、知り合いに医者がいるからここに来て診てもらった。市販じゃなくて、ちゃんとお前用に出してもらったやつだから効くと思う。」
そこまでしてくれていたことに驚く。本当、今日はヨウに迷惑掛けっぱなしだな。
今度なにか礼でもした方が良いだろうか。
……俺が改まってそんなことしたら、キモいか。
水の入ったコップを渡してくれたので、それで薬を喉に流し込んだ。
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