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「ただいま。」
「お邪魔します。」
電気を付けてキッチンに袋を置く。
ちゃんと美味しく作らないと!
一人意気込んで、服の袖を捲る。
「適当に座ってて。」
「何か手伝うけど?」
「いい。今日は全部、俺がやる。」
「わかった。」
必要なものを取り出して、下準備をしていく。
玉ねぎとニンニクを微塵切りにして、卵と粉類を混ぜて、肉を捏ねて。
冷蔵庫で置いておく間に、付け合せのグリルする野菜切って、
味噌汁を作り、ミニサラダを作り、お米も研いで、準備は完璧だ。
「飯、何時がいい?」
「んー、七時くらい。」
炊飯器をセットして、俺も一息付いた。
因みに今の時刻は六時。
「お疲れさん。」
「おう。」
一時間、暇だな。何しよう。無言だと、少し、というかかなり気まずい。
話題は無いだろうか、と思ったところで、人と話すことに慣れていない俺は、即座にネタが浮かばない。
「…荒太、こっち」
「……?」
ソファーに座っているヨウは、自身の隣をぽんぽんしている。……座れってこと?
ヨウが指定した所はソファーの端で、何故そんな狭い場所に座るのかよく分からない。
首を傾げつつ、そこに座る。
するとヨウは、そのまま俺の方に倒れてきた。
「ちょ、何してんだよ。」
「昨日殆ど寝てないから膝貸して。」
「っな、いや、そんなの普通に枕使えよ!」
「んーもう動けない……。」
そのまま目を閉じて眠りの体制入ったヨウは、七時前に起こして、と言って本当に寝てしまった。
何これ、どうすればいいわけ……。
下を向けば、ヨウの綺麗な顔が正面から目に入る。もう俺の心臓はバクバクだ。
この音が、心臓から全身へ、接している膝からヨウへ伝わってしまわないだろうか。
なんで俺の膝なんか使うんだよ……。女の人の柔らかい太ももと違って、俺の足は骨と筋肉で硬い。
寝心地なんて全く良くないだろうに、すーすーと寝息をたてるヨウは、結構深い眠りに落ちていると思う。
……そんなに昨日寝てなかったのか。バイトとか課題とか、忙しくて大変なのは分かるけど、体は大切にして欲しい。
改めて見ると、少しだけ目の下が黒いような気がするヨウの顔を、そっと撫でた。
鼻をつまんだり、頬をつんつんしてみたり、悪戯してやろうと思っていた。けれど、これだけ寝入っているのに起こしてしまうと忍びないので、ずっと寝顔を眺めていた。
……結局、寝顔拝めたな。
ヨウの寝顔を見たのは、今日が初めてということになる。
前にも一度、ヨウが寝ていると思って、思わず顔を触ったりと色々してしまったことがある。けれどその時、ヨウは狸寝入りをしていたから、あれは本当の寝顔じゃなかった。
ずっと見ていても飽きない。それ程に美しいヨウの顔は、国宝級とさえ思えてくる。
多分、スカウトとかされたことあるんだろうな。
見るだけじゃ足りなくなって、前みたいに触れたい衝動が湧き上がってくるけれど、必死に堪える。
美しく色気の漂うヨウを、まるで嬲るように見つめている俺は、変態なのだろうか。
……いいや、コイツの寝顔を前にしたら、みんなこんなふうになってしまうと思う。きっとそうだ。
……なんて阿呆なことを考えていると、時計の針はかなり進んでいた。
あと十分で七時だ。
ヨウを起こすか迷ったけれど、ぐっすり眠っているのなら、そのまま寝ていてほしい。
とりあえず、ご飯が炊けるまで待つか。
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