アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ココア味
-
「なんだ、また来たの」
深夜の突然の来客は高校からの友人、晴(ハル)だった。春先だというのに肌寒い今日は一日中どんよりとしていて夜から雨が降り出した。晴もその雨にやられたらしい。
「濡れたー、お風呂入っていー?」
「…いっつも勝手に入る癖に。」
雨の匂いに混じって女物の香水の香りを纏った晴はいつものように僕の部屋へ上がり込んだ。僕は玄関の鍵を閉め、いつものように脱ぎ散らかした晴の靴を揃えてからあとに続く。いつもと変わらない夜だ。
なんだかボーッとする頭で湯船に湯を溜めていく。蒸気でうっすらと曇った鏡に映る自分を見つめながら、リビングから投げ掛けられる「俺のスウェットどこー」とか「タオル借りるよ」とかいう晴の言葉に1つ2つ生返事を返した。
確か、あの日も雨だったっけ。
「きょーすけ」
ふと僕の思考を遮ったのは晴の言葉と背中に感じる重みだった。僕よりも背の高い晴はぐでっと後ろから覆い被さるように僕を抱き締める。んー、と甘えたように唸る声がすぐ耳元で聞こえ、ぞくりとした。
「重いって」
「そんなこと言うなよ」
「…どうしたの」
「癒されにきた」
「はいはい」
「なんだよ冷たいな」
淡々と交わされる言葉に深い意味はない。
晴には付き合っている人がいて、それは僕も同じだ。
僕らは、恋人じゃない。でも友達でもない。じゃあ家族?でもそれも違う。
僕らは「ぼくら」でしかなくて
ただこうやって
「ココア飲んでた?」
「なんでわかったの」
「味がする」
寂しさを埋めてる。
僕らは寂しさを持て余してるから。
依存というには危うい。
どちらにせよ僕はされるがままだ。
別にそれで構わなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 87