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ゲーム
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「もうすぐ冬休みだね」
「あー もうそんな時期か」
「晴くんは遠出する予定とかあるの?」
冬休みの始まる1週間前の事だ。晴と僕は寒空の下帰宅するのが億劫で、ホームルームが終わった後もずっと教室に残っていた。
誰も居ない教室。ストーブに当たりながら晴と僕だけの空間は心地が良かった。
「お前な呼び捨てでいいって言ったろ」
「あぁ、そっかごめんごめん」
ふは、と笑って見せたのに晴にそれとなく目を逸らされてしまった。微妙な沈黙が流れ、何かしたのだろうかと思考を巡らせてみたものの特に思い当たる節もなく。
「予定…は特別ねえよ。きょーすけは?」
「僕はないよ、家族旅行とかもしないしね」
盆や正月など家族の集まる行事とは無縁な生活を送って来た。家族で外食したことも旅行したことも勿論ない。
だけどしたいとも思わない。
無い物ねだりをしたり他を羨んだりする感情が僕には欠けているらしかった。
「お前一人暮らしなんだっけ?」
「そうだよ」
「お前ん家行きたい」
それから始まる冬休みの殆どを晴と僕の家で過ごした。晴が持ち込んだCD、漫画、ゲーム。晴が教えてくれるものはどれも僕にとっては新しくて珍しくて、僕もすぐに好きになった。
「お前ゲーム弱すぎんだろ!」
「うるさいな!次は絶対勝つし」
初めて友達とゲーム。初めて友達と口喧嘩。
初めて、心の底から笑った。
思い返せばいつも相手に合わせて泣いたり笑ったりしていた気がする。相手が泣いたら悲しい顔をするように心掛けたし相手が笑ったら僕も笑った。
それなのに自然と笑顔になっていた。
晴と居ることが素直に楽しかった。
「お前、そっちの方がいいよ」
いつもいい加減な癖に。いつも僕の事馬鹿にする癖に。どうして時々優しい目で僕を見るの。
「よーしじゃあ次はこっちな。これだったらお前でも勝てるだろ」
夜遅くまでゲームは続いたけど僕は結局一度も勝てなかった。
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