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贈り物
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そんな2人で過ごす日々を幾つも過ごすうち、僕は気付いてしまったのだ。
ある日の放課後。
日直だった僕は担任に雑用を任され遅くまで残っていた。晴はもう帰ってしまっただろうか。携帯に新着メッセージはなく、まだ待っていたら悪いと思い足早に教室へ向かっていた。
一緒に帰ることを約束してるわけでもないから、別にいいんだけれど。
薄暗い廊下に、教室から漏れる光。
少しだけ開いたドアの隙間。
「晴くん、…っ」
そこに居たのは晴と、もう1人。
はっとして、思わず息を呑んだ。
そしてすぐに「羨ましい」と思った。
晴の胸に抱き付く女の子。その華奢な肩は僅かに震えていて、ふわりと揺れる髪も微かに聞こえるその声色も、何もかもが可憐な女の子。
2人は何か言葉を交わし、そしてゆっくりとその背中に回される、晴の手。
見たくないのに目が逸らせない感覚に支配された。僕は何をこんなにも残念に思っている?
なぜこんな所でコソコソと息を殺して
「 … う っ 」
泣いているのだろうか。
2人の影が重なろうとした時僕はやっとその場を後にした。
2人は付き合うのだろう。いや付き合っていたのか、よりを戻したのか僕が知る由もないけれど。親友の幸せは嬉しいはずなのに胸がスースーする感覚が分からない。
それに今までだって晴が女の子と付き合う事はなんどもあった。それが今更なんだというのだ。
でも晴が、僕の家に来て「きょーすけといる方がたのしーわ」と「お前が1番楽だ」と、そんな何気ない言葉の1つ1つにどこかで優越感を感じていたのかもしれない。
彼女よりも僕なんじゃないかって。
ふらふらと家路につきながら僕は今まで気付かないようにしてきた気持ちに気付き、どうしようもなくて小さく笑ってしまった。
どうしようもなさすぎてまた涙が溢れた。
僕、晴のこと好きになってたのか。
ぐるぐると僕の頭の中を支配していた割にその言葉はストンと僕の中に落ちてきた。
晴はいろんなものをくれる。
一緒に過ごす時間の楽しさ。
分かち合えることのできる喜び、安心。
こうして1人で家に帰る寂しさも、行き場のないこの気持ちに気付いてしまった切なさも。
彼女のふわりと揺れる髪がやたらと脳裏に焼き付いている。ああ、これが嫉妬か。こうやって他人を妬ましく思うのか。
ひしひしと胸を刺すような痛みでさえ、晴が僕にくれるものなのだ。
他人のことなんてどうでもよかった。
それなのに溢れて止まらない。
思い返せば僕の頭の中は晴でいっぱいだった。
一体いつから?
…たぶん、最初から。
ゆっくりと空を見上げた。ツンと目頭が熱くなってふう、と大きくため息をついた。
学ランの袖で涙を拭い僕は決心する。
「 好きじゃない 」
…たぶん、初恋だった。
僕は初めて気付いた恋にすぐさま蓋をした。
どうしようもない事を知っていたから。
明日からまた僕は恋を知らない僕に戻る。大丈夫だ、どうってことない。僕ならうまくやれる。
感情を殺すなんて容易な事なのだから。
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