アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ミネラルウォーター
-
「なーあ、きょーすけ?岬サンって誰よ?」
その日は珍しく昼間から晴がやって来て、とりあえず挨拶代わりに一度行為に及んだ後の事。
僕が冷蔵庫のミネラルウォーターを取りに立った隙に勝手に僕の携帯を覗き見たらしい晴がニヤニヤとしながらこちらを見ていた。
「…えっ?ちょっ、勝手にみんなよっ」
「おー、慌ててる。なに?彼女?」
急いでその手から携帯を奪い返したものの、素っ裸の晴は胡座をかいたまま動じない。楽しそうに笑いながら僕の顔を覗き込んだ。
「……まぁ。」
内容までは見られていないらしい。勿論、岬が男であることも。
「なのにサン付け?あ、年上か!」
晴は僕の事を普通に女と付き合っていると思っている。僕も自分と同じように、暇潰しか気晴らしかで体を重ねているだけで普通にノーマルだと思っているのだ。
「…そうだよ」
わざわざ晴に言う必要はないのだけど、なんだか悔しいのだ。言ってやりたい、お前だけじゃないんだぞって。そんな事当の本人は気にもしてないんだろうけど。
「ええ年上かー、きょーすけはそっちいくんだな。いくつの人?」
感慨深そうに間延びした声をあげながら晴は頷く。別にどんな反応するか気にしてたとかじゃないけど、全然。
「…28。既婚。子持ち。」
聞かれた年齢以外にそう付け足した。嘘じゃない、本当のことだ。
「…まじか。え、それって不倫じゃねえの?」
晴があまりにも驚いたような顔をするから、苛々する。自分はどうなんだよ。ふとSNSで見た彼女とのツーショットが頭を過ぎった。
「それ晴が言う?彼女いるのに、こうやって僕と」
言いかけた瞬間、しまったと思った。
「あ?これはなんか別じゃん」
___________ 別。別ってなんだ。そう思う反面、返ってくる言葉なんか最初から予想できたのに、と思う。今更だけど、
僕にとっては、全然別なんかじゃない。
「…それもそうだね」
そう言ってから僕は飲みかけのミネラルウォーターをまた一口飲んだ。傷つくのは分かっているのになんであんな事言ってしまったんだろう。もうこの手の話は晴としないって決めたのに。
「俺も飲みたい」
もう一口煽ったところで晴がそう言うから、持っていたペットボトルを差し出した。
「そっちじゃなくて」
その差し出した腕を不意打ちに引かれ、思い切りバランスを崩してしまえば強引に口付けられた。
口に含んだばかりの水を晴に奪われる。溢れた水は顎を伝った。
「……ベッド濡れたじゃん」
差し出したペットボトルは勿論キャップなんかしていなかった。半分以上残っていた水はみるみるうちに溢れ、乱れたシーツに染みを作っていった。まるで僕の心に広がる闇のように、静かに。でも着実に。心が冷えてしまうようだった。
あまりにもその闇に慣れてしまっていたものだから、どうして晴が急にキスしてきたのか、とか、痛いくらいに抱き締められたのがなぜか、とか考えもしなかったのだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
21 / 87