アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
※午前3時
-
「…も、ぉ、なんで…っ」
ダッシュボードに手を突き、もどかしい快感にぶるぶると震えながら僕は後ろにいる岬に責めるような視線を投げた。
「…さすがにゴム無しではできないよ…っ、ちゃんと、っ、挟んでてね」
結局車内で行為に及んだ。いつもフカフカの良い香りのするベッドでしているだけに新鮮だ。でもそれ以上に本能のまま求められている感覚がどこか僕を安心させる。
結局いざ挿入、となったところで、何度強請っても岬は絶対にコンドームなしでは挿れないと譲ってはくれなかった。
閉じた僕の内腿で息を詰める岬も、これはこれで官能的だけど。硬い岬のペニスの先端が僕のペニスの裏に当たるのも、それはそれでありだけど。
ひどく抱いて欲しい。それが僕の願いだった。
女の子にするように優しくしないで。
それを岬は僕のリクエストとして叶えてくれる。
「く、…これはこれで興奮する。ね、恭介くん」
耳元で囁かれる岬の熱い声にぞくりとして、僕の名前を呼ぶ声にまた何とも言えない気持ちになった。
その後岬が達し、結局僕も岬の手でイかされ、今夜はそれでお開きになった。後ろには何もしてくれなかった物足りなさのせいで気分は晴れないのだけど。
「部屋までお姫様だっこでもしようか?」
衣服を整え車内から降りた僕に岬がわざとらしくそう言って、もう、と軽く悪態を着いた。
「…優しくするのも僕がしたいからするんだから。いいでしょ?」
岬は余裕そうな表情を崩さない。僕は肯定も否定もしなかった。
「…じゃあ、また。夜遅くなっちゃってすいません」
そう言ってドアを閉めようとした時、岬は僕の名前を呼んで引き止めた。何だろう?と車内を除き込んだ刹那、ぐいと腕を引かれた。
「…んっ、ぅ…!」
突然の口付けだった。向かいから来た車のヘッドライトに照らされて車内が明るくなる。絶対に見られただろうな、そんな実感がじわじわと僕の脳を支配した。
「おやすみ」
一通り僕の口内を掻き回すと岬は何事もなかったかのようににっこりと微笑んだ。回っていた酔いが醒めてくるのと同時に痴態を晒した自分に今更恥ずかしくなって、そそくさとドアを閉めた。
岬の車が発車するのを見届け、確認した時刻は午前3時を過ぎた頃だった。
*
恭介の顔が見たくなって、突然マンションにやって来た。数日顔を合わせていない気がする。時刻は午前3時前。
我ながら非常識な時間だと思う。だけどなんだか来てしまった。寝ているならそれでいい。チャイムを押して出て来なかったらそれで帰ろう。そう思ってやって来た。
手ぶらで行くのも味気ないかと思い、近くのコンビニで適当にチューハイとつまみを買った。あいつあんまり酒飲めねえし。ついでにアイスも買いたくなって、イチゴとバニラのを1つずつ買った。
街灯の並ぶ歩道を歩いて、マンションへと向かう。エントランスの前には黒のレクサスが停車していた。
近づくにつれて車内に人影があるのに気付いた。こんな時間に珍しい、なんて思いながら少しずつエントランスへと向かっていく。
途中で人影が1人助手席から降りた。
暗くてよく見えなかったが、見覚えのあるシルエットに思わず立ち止まる。
「…きょーすけ?」
もしかして例の彼女だろうか。
不倫で、子持ちの「岬サン」のイメージを勝手に膨らませていく。あの恭介の隣に居る女性ってどんなだろう。髪が長くて、きっと美人で、儚げで____________ 顔も知れない「岬サン」を想像した。彼女と居る時の恭介は一体どんなだろう。ふと無意識のうちに俺は自身の手を強く握り締めているのに気付いた。
そんな俺の馬鹿みたいな想像と、実際今から目にする光景は随分掛け離れていた訳なのだが。
しばらくして恭介がドアを閉めようとしたところで、運転席の人物が恭介の腕を引いた。恭介がバランスを崩した瞬間に影が重なる。その手は、大きくて、男物の腕時計______?
向かいからやって来た車のヘッドライトが車内を照らす。それは紛れもなく恭介で、キスをしている相手は紛れもなく__________男だった。顔はこちらからは見えないがライトグレーのスーツで一目で大人だと分かる。
恭介の頬に添えられた左手の薬指にはライトに反射して輝くリングが嵌っていて、そんなものに気付いてしまった事に酷く後悔した。俺はまた自分の拳を固く握り締めて馬鹿みたいに歩道に突っ立っているだけだ。
「…岬サンって、男かよ」
長いキスだったと思う。いや短かったのか?どっちでもいいけど。助手席から降りてきた恭介がそそくさとエントランスにかけていく。自動ドアから漏れる光で、恭介の頬が耳まで赤く染まっているのに気付いて苦しくなった。
馬鹿な俺は来なかったらよかったと酷く後悔して、馬鹿みたいに普段飲みもしないチューハイと、食べもしないアイスクリームを持って帰るのだ。
どうしようもない喪失感だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
32 / 87