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来客
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「家に入れてくれたの初めてじゃない?いやあ、嬉しかった。じゃあ、またね」
まだシーツにくるまったままの僕に、岬がキスを落とした。重い瞼を開けるとぼんやりとした視界に、いつの間にか衣服を整え髪もばっちり整えた岬が居た。
「…急に呼びつけたりしてすいません、来てくれてありがとうございました」
「平日の昼下がりに君とエッチなんて、悪い事してるみたいで凄く楽しかったよ」
にっこりと笑って颯爽と去って行く背中をベッドから見詰めた。パタンとドアが閉まって、また部屋を静寂が包む。悪い事、か。確かにそうかも。
珍しく昼間まで寝ていた。目が覚めて何も気力が湧かなくて、でも1人で居る虚しさから午後2時くらいだったか、岬に電話をしてみた。仕事中だろうと思ったが、運よく17時まで空いているとの事で、自分のマンションに呼んだのだ。
大学へ行く気にもならず、誰にも会いたくない。
先週たくさん入ったから、今週はそんなに入ってくれなくてもいいよとバイト先のマスターも言ってくれている。正直田崎に会うと思うと億劫だ。
また教え子を連れて来られても困るし。
面倒な事は嫌いだ。
争いたくないし、傷付きたくない。出来るだけ波風立てないように静かに生きたい。
だから今みたいなのは僕の意にそぐわない筈なのに、恋愛ごときでこんなエネルギー使いたくないのに。
「晴と会ったのいつだっけ…」
最後に会ったのは、バイト前に偶然エレベーターで会った時だ。あれはいつだった?1週間、いやもっと前?
会ったと言ってもすれ違ってしまったから、最後に晴と体を重ねたのはもっと前ということになる。どうしたんだろう、いつもだったらもっと頻繁に来ていたのに。
「…あ、そうか」
____________ 彼女と上手くいってるのか。
いつの間にかまた眠ってしまっていて、気付いたら20時を過ぎていた。いくらなんでもダラダラ過ごしすぎた。シャワーでも浴びようかと思った時来客を知らせるチャイムが鳴る。
さすがに素っ裸ではダメだと思い、とりあえず脱ぎ捨てた衣服を拾った。汚れは全部岬が綺麗にしてくれていたからシャワーを浴びていなくても何とかなるか、と。
何か宅配でも頼んでいただろうか。勧誘だったら面倒だな、なんて誰かも確認せずドアを開けた。寝過ぎて頭が痛い。
「新聞なら間に合って…」
「…新聞じゃねえけど」
晴だった。何日かぶりの晴だった。
「…髪、切った?」
「少し」
いつもはあまり見ないようにしている晴の顔を呆然と見つめていた。久しぶりだな、なんかもう会えない気でいた。馬鹿だな、なんて。はっきりしない頭で晴の整った顔を、長い睫毛を、筋の通った鼻を、少し短くなった髪を、見ていた。
ずっとこの先も、見ていたいと思った。
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