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※息が出来ない
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講義が始まる前に大学を飛び出して俺が向かった先は恭介のマンション。
ここに黒のレクサス止まってたんだよなとか、そんな事が過るがいつもより早足で、ズカズカと意識して歩くようにエントランスをくぐりエレベーターに乗り込んだ。
4階の恭介の部屋は奥から2番目の403号室。
父親名義だというマンションは大学生の一人暮らしにしては十分な佇まいである。
なんの連絡もなしに来た事を一瞬躊躇ったが、そういえば今までもちゃんと連絡なんてしてなかった事を理由に半ばヤケクソでチャイムを鳴らした。
しばらくの沈黙の後、足音が聞こえる。
留守じゃなかった事に対する安堵と恭介と顔をあわせる事に対するほんの少しの緊張。俺らしくない。
ドアを開けた恭介は俺を新聞の勧誘か何かかと思っていたようで、俺と分かると何かほうけたような顔をした。
「…髪、切った?」
やたら俺の顔を見てくるのは寝惚けているせいだろうか。少し伸びた髪は乱れ、いつもよりフワフワと跳ねている。今拾って着てきましたと言わんばかりに羽織った白のシャツはボタンを掛け違えていて、鎖骨が覗いていた。
______________ 無用心極まりない。
男の恭介にこんな事を思うのは変だって思う。でも俺の知らない恭介が男にそういう目で見られているんだと思うと気が気じゃなくなるようだった。
「少し」
俺の返事に恭介は何も言わない。ただ俺の顔をじっと見てぼーっと立っていた。目尻が少し赤いのは泣いたからか。そういえばこの顔に見覚えがある。そうだ、恭介はいつも________
『お前なんでいつもヤってる時泣くの?だから終わった後目腫れてんだよな』
いつだったかベッドの上でそんな話をしたのを思い出した。そうか、セックスしていたのか。今さっき?それで寝ていた?裸だったから急いで服着て出てきましたってか。
未だにぼーっとしているその顔にどうしようもなくなった。俺を支配する感情は怒りだ。ドロドロとした黒い感情が足先から這い上がってくるようで自分自身で制御できる気がしない。
そのまま勢いよくドアをこじ開け恭介の肩を掴んで無理矢理なかに入った。俺の後ろでバタンとドアが音を立てて閉まり、その瞬間に恭介の唇を奪う。
「う…っ!?」
驚いて後退ろうとする恭介をすぐ横の壁に押し付け、ドンと鈍い音が鳴った。背中を打った恭介の悲痛の声が俺の中に消えていく。壁に押し付けたまま恭介の顔を固定して口内を貪った。
「ッ…んんっ!…っ!」
口付けの合間の苦しそうな声と、顔を固定している手に触れた冷たい感覚でやっと我に返った。恭介の目から溢れた涙が俺の手を濡らしていく。それでも黒い感情が収まってくれる事はなく、もっともっとと口内を掻き乱した。
吸い付くように舌を追い掛け、歯列をなぞり、唾液を奪う。この唇に俺の知らない男が、あのレクサスの男が口付けていたんだ。もっと他にも俺の知らない男が、この唇を、舌を。
「ふっ、…ぅ、ぅ、」
どんどんと俺の胸を叩く恭介にやっと唇を解放きた。余程息が苦しかったのか、はあはあと肩で息をするように必死で酸素を取り込む様子を見てまた俺はいつかの会話を思い出す。
『…息、できな、ふ…!っ』
『ばっか、お前、鼻で息しろって…ん』
『む、り…っ、苦し…ッ』
『お前そうやって泣くから鼻詰まって息できねーんだよ、キスする時は泣くなよな』
あの時も泣いていて、今目の前にいる恭介も泣いている。俺は泣いている恭介ばかり見ている気がする。顎を伝った唾液を拭ってから恭介は鼻を啜って目を擦った。潤んだ瞳が「なんで」と俺に訴えていた。なんでだろう。俺だって分からないんだ。
「…溜まってんだよ、ヤらせろよ」
口を突いて出た言葉は我ながら人間性に欠けていると思う。馬鹿だよな、お前の事泣かせているのは紛れもない事実なのに。お前がゲイだって知った瞬間にこんな心を乱されるなんてどうかしてるよな。
恭介の瞳がまた俺をじっと見た。俺を拒んでくれよ。最近俺、変なんだ。だから拒んで、ふざけんなって殴って欲しい。ついでにゲイだって事もんなわけないじゃんって否定してくれ。何言ってんのって言ってくれよ。
「…」
恭介は何も言わなかった。何も言わずに俺の服の裾を握って、ほんの少し背伸びをして、俺の唇にに口付けた。一瞬触れて、すぐに離れていく。そのまま目を伏せてしまった恭介に、もう堪らなくなった。
結局部屋に雪崩れ込んで、ベッドに着く前にソファで押し倒した。俺の知らない香水が鼻を掠めてまたどうしようもなく黒い感情が顔を出す。
普通だったら違う奴の匂いなんかしたら萎えるのに、もう止められなかった。
俺の匂いになればいい、そんな風に思ったからかもしれない。俺も必死だった。
いろんな所にキスをして、噛み付く。
俺が歯を立てる度、痛そうな声を出す恭介に俺の加虐心はより一層煽られたし、俺が付けた痕が残っていく様子に優越感を覚えた。
「ぅっ、いった…いよ、っ、晴っ」
恭介の衣服を全て奪って、自分は服を着たまま。電気を付けていなくても白い肌が俺の視覚を刺激する。鎖骨から胸、胸から腹へ口付けながら移動した時俺は気付いてしまった。
足の付け根にある、キスマーク。
俺ではない誰かが付けたものだ。首や鎖骨には無かったのにここだけに残す意味はなんだ。
「くそ…!」
そのキスマークを消すように上から噛み付いた。
薄い皮膚に歯の食い込む感触だけが妙に現実味を帯びていた。
「痛っ、ぁ」
恭介の悲痛な声がして、そっと目にかかった髪をはらった。しっとりと汗をかいた額に張り付いて、そのまま頬に触れた。なんとも言えない切ない顔をするから俺も苦しくなる。
「なんだよ…、その顔っ」
剥き出しの恭介のペニスを掴んだ。硬くなったそれは恭介が紛れもなく男だということを表している。上下を繰り返しているうちに卑猥な音が鳴り、その先走りを塗り込めるように追い付めた。
「ぁっ、はっ、…ふっ、」
いつもは手の甲で抑えている声を抑え切れないでいる恭介の声が俺の視覚のみならず聴覚まで犯していく。
「はぁ、っ、晴、晴っ、」
名前を呼ぶ恭介の綺麗な顔を見ながら、その濡れた睫毛も上下する胸も、乱れる恭介を焼き付けるように見詰めていたらビクビクっと恭介の体が跳ねて、手の中で恭介の白濁が弾けた。
「…ッはぁ、はぁ」
指に絡みついた精液は薄い。それが意味する事はただ一つだ。さっきまで俺の知らない誰かと行為に及んでいたなら尚更。
「…なあ、お前慣れてるよなあ」
俺の中で少しずつ芽生えている感情に気付いて、どうしようもなくて笑ってしまった。どうしようもなさすぎて泣きたくなった。
もうどうにでもなればいい。
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