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「うお?!晴こんなとこで何してんの?お前3時の講義で今日終わりって言ってなかったっけ」
「あー、いや、なんかうん。課題?」
「ほー。最近やたら真面目だな」
「まあ少なくとも中山よりは」
「うるせーよ」
田崎と話した昨日から、やはり恭介のことが気になって仕方ない。家には彼女が居座っていて(だいぶ前に渡した合鍵を回収するのを忘れていた)帰るのも面倒で、と自習室でぼーっとしていたらもう18時だ。
というか、一番気になっているのは講義終わりに話しかけて来た田崎だ。
『夏目晴くーん、聞いてよー』
人目も憚らずひらひらと手を振って近付いて来た田崎はあの得意のにやけ顔で、俺に耳打ちしたのだ。
『うちのクリニックにさ、例の子、来てくれることになっちゃったーさっき電話があってさ』
本当に?とかいつ?とかが気になって何も手につかないと、そういう訳だ。
「あーもう…、俺には関係ねえのに」
「晴?」
「いやなんでもない、帰るわ」
立ち上がりリュックを肩に掛けた俺に中山は思い出したかのように言った。
「てかさっき田崎の病院にさあ!裏口からあの子が入ってくの見たんだよ!この前写真見てたやつ!」
____________ 恭介のことか。
「あれはものにする気だなー、手が早いわやっぱ。イケメンだもんなオッサン。肩なんか抱いちゃってよ」
俺もどっかでパーっとやりたいよ、と言った中山の顔を呆然と見つめた。さーっと血の気が引いていくのが分かる。
面倒臭いことは昔から嫌いだった。他人と深く関わる気もさらさらない。彼女を作ったって形だけだと言われればその通りで否定する気もない。だけど、昔から何故か恭介のことだけは放って置けない。
転校して来たあいつを、いつも寂しそうに笑うあいつを、時々つらそうなあいつを、放って置くことなんてできなかった。面倒臭えって突き離すことが出来ない。いつだって。
我に帰れば弾かれたように自習室を飛び出した。
構内を全力疾走で駆け抜け、すぐ脇の細い道に入る。職員用だか何だか知らないが躊躇うことなく中へ。
目に付いた奥の部屋の札にはカウンセリングルームと書いてあり、ドアノブを握った。幸い鍵は掛かっていない。もしかしたら俺の勘違いかもしれないし、恭介にとっては余計なお世話かもしれない。
ただ、俺が許せなかっただけだ。
俺がこうしたいからする。それだけ。
「恭介っ!」
勢いよくドアを開いた。まっしろな部屋はカーテンが閉まっていて薄暗い。ほとんど部屋の中央にあるソファーの前に上半身裸の恭介が立っていてすぐ向かいに田崎が座っていた。
「は、…る?」
足元には恭介の物と思われる服が散らばり、田崎の手が恭介の肌に触れている。恭介の大きく見開かれた目からは涙がはらはらと流れ落ち、微かに震えているように見えた。ぶわっと腹わたが煮え滾るような感覚を覚えそのままズカズカと2人に近づいた。
恭介に触れている田崎の手を払い除け、恭介の腕を強引に引き寄せた。よろけた恭介が驚いたような声を出すが気にしない。恭介の体はやはり小刻みに震えていて俺は田崎を睨み付けた。
「やだなー合意だよ?その子に聞いてみるといい。」
田崎がへらりと笑えば頭に血が上りそうだ。羽織っていたデニムのシャツを恭介に頭から被せ、恭介を田崎から隠すように自分のすぐ後ろにやった。掴んだ恭介の腕が細くて少し面喰らうが、田崎を睨み付ける視線は外さない。
「知らねえっすよ、そんなの」
田崎は呆れているのか何なのかやれやれと首を振って見せた。感情に任せて田崎を怒鳴ったりする気も殴りつけたりする気も失せる。それならもうこれ以上ここにいる理由もない。
「…行くぞ」
そのまま掴んだ恭介の腕を引いて、部屋を後にした。とりあえず乱れた衣服を整えさせクリニックから出たはいいがその間中一言も話さなかったし、恭介の顔を見る事もまるでできなかった。
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