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刺さる
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初めてキスをして、馬鹿みたいに行為に雪崩れ込んだ。若さ故のあの独特の、動物のような熱を持て余していた記憶がある。瀬名は細い細いと思っていたけれど、その割にはちゃんと男の身体だった。
「…これって慰めてくれたの」
たぶん瀬名の狭いアパートの部屋だった。折り畳みのベッドはひどく軋む上に狭いしで、もうこんなところは二度とごめんだとも思った。ベッドからはみ出ないように身を寄せ合っていると瀬名がぽつりと言うから、僕はさあ、とだけ答えた。照れ隠しだった。この僕に甘い甘いピロートークでもしろと言うのか、なんて内心毒づきながら。
恋とか愛とか、そこに明確な何かがあったのかと聞かれると答えづらい。ただ、瀬名が放って置けない________困っているなら助けてやりたくて________つらいなら側に居てやりたくて______こうして手を握って、キスをして、優しく抱き締めてやればその疲れた笑顔がいつしか、本当の心から笑った顔になるんじゃないかと_________
そんなふうに思っていた。
「…慣れてたけど、田崎くんは経験あるの?というか、ゲイ?」
瀬名は面白がる風でもなくただ純粋に僕にそう尋ねた。僕は正直この時まで自分がそういう性的嗜好がある事も、人並みに性欲があるのだということも自覚してはいなかった。先に述べたように僕は他人に興味がなかったから。(かなりの遊び人らしいという噂は何故か常々立っていたが)_______つまり僕にとっても瀬名は初めての男だった。
「だったらどうする?」
「どうもしないかな」
「…瀬名こそ、急に男に抱かれたのに落ち着いたものだな」
「うーん、田崎くんだから、かな」
__________
淡い記憶が、胸に刺さる。
目を閉じればこんなにも鮮明に蘇ってくる。
瀬名、僕はもうこんなおじさんになってしまったよ。あの時は僕も若かったのに。まだまだ未熟だった、君もそう思うだろう?
もう一度瀬名に逢えたら、なんて事を考えていたんだ。話したい事がたくさんあるんだ。
目の前の若者二人に話したところで、君には届かないんだろうけど初めて誰かに話そうと思えたんだ。だからもう少し、続けてみようと思う。
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