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「慧。さっきは当たって悪かったな」
「え、いや…別に」
意外にも素直に歩が謝る。
気まずそうなその視線は俺の背後にくっついてる人物を睨む…が本人は全く気にしない。
「もういらない?」
リカちゃんが握った俺の手には中身が半分ほど残ったグラス。
「飲まないなら頂戴」
答えるより先に奪われ、その体内に消える。
「……慧のなら飲めんだ?」
「当たり前だろ」
「もっとすげぇの飲んでるもんなぁ?」
「えらく攻撃的だな。盛って返り討ちにでもあったのかよ」
全く会話の意味がわからない。
わかるのは、リカちゃんがやたら俺を触ることだけだ。
左手は腰に巻きつけ、右手は髪を梳く。
「ちゃんと乾かしてんじゃん。
いつもは俺にさせるくせに」
「……リカちゃんさ、弟の前でこういうことして恥ずかしいと思わないのかよ?」
「恥ずかしい?何が?」
リカちゃんに人並みの羞恥心を求めちゃいけない。
それに慣れている歩は時計を見て立ち上がる。
時刻はみんなが来る20分ほど前。
けれど歩は…1つ知らないことがある。
「俺もう行くから」
「別にいいけど。でも今はちょっとタイミング悪いんじゃないかなぁ」
「あ?」
振り返った歩。
ニヤッと笑うリカちゃん。
その視線が合わさった時、それは鳴る。
ピンポーーン。
驚いた歩の目が見開き、固まった。
「歩…残念だけどお前の計画は失敗だな。
豊は基本10分前行動。でもって俺は時計を10分早めて生活してる」
「なっ?!」
「豊が来たってことは自然とあいつも連れられて来てるだろうなぁ…ちゃんと余裕もって行動しろって学校で優しい先生に教えてもらわなかったか?」
「余裕もって行動してんだろうが!!」
「まだまだ詰めが甘いんだよ。いいお手本がここにいるんだから、しっかり見て学ばないと」
自称優しい先生は俺の髪に口付けながら「こんなの常識だよね、慧君」だなんて追い打ちのように揶揄う。
「じゃあお前…さっきのは…」
「俺があんなくだらない八つ当たり相手にするかよ。
だから喧嘩売る相手は考えろって言ったんだよ」
リカちゃんは弟にも容赦ない。
勝ち誇って玄関へ向かうその姿は悪魔にも見える。
それなのに…どこかお兄ちゃんを感じさせるんだ。
きっと歩もそれをわかっていて…だから怒らないんだろう。
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