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「なあ、いつまで拗ねてんの?いい加減に機嫌直せよ」
俺から出来るだけ離れるようにして、ソファの端に座っているウサギに話しかける。
こちらに背中を向け、なんの反応も示さない姿勢に、初めは申し訳なさが勝っていた…が、今は気に食わないと思ってしまった。
確かに確認もせず宇宙人だと決めつけた俺が悪い。
けれど胸元にあるのは、誰が見てもうさぎとは思えないイラスト。それが刺繍されたネクタイの先を手に取った。
どれだけ角度を変えても、到底うさぎには見えない。
青色なんて普段はあまり巻かない色に、うさぎの刺繍入り。オーダーメイドで用意してくれたであろうこれは誕生日プレゼントに違いなく、きっと選ぶときも渡し方もウサギなりに悩んだはず。
それを台無しにしてしまったのは悪いと思う。
思うけれど、だ。
ウサギがそっぽを向いてから軽く10分は経とうとしていて、さすがにこの状況でタバコを吸うのが憚れた俺は我慢しっぱなしだった。
スマホを触ることも、タバコを吸うことも出来ず肝心の慧君は不貞腐れている状態。俺が今出来ることと言えば返事のこない背中を見つめ、そこに向かって独り言を続けることぐらいだ。
下手に出て駄目なら、敢えて上から行くか…それとも冗談っぽくからかって怒らせるか。
考えを巡らせる俺の前でそいつが立ち上がる。そのまま部屋の奥にある机に向かって行って、ペンケースをごそごそと漁った。
黙ったまま何かを探していたウサギが戻って来て俺のネクタイ、ついさっき渡された記念すべき誕生日プレゼントを掴んだ。
その反対の手には黒のマジックが握られていた。
「慧、君…何する気?」
問いかけたた俺にウサギは即答する。
「あ?消すんだよ。こんな何の絵かもわかんねぇやつ要らない」
「待て。待てってば」
ネクタイを凝視するウサギの目は完全に荒んでいて、自棄になっているのがわかった。
宇宙人風のウサギを守ろうとする俺と消し去ろうとする慧君の攻防が始まる。
「離せよ!!」
「これはもう俺のものだから。お前に消す権利はない」
「じゃあ返せ。プレゼントは別のを用意するからこれは返せ!」
「嫌だ。男なら渡したものを返せなんて言うべきじゃないよ、慧君。可愛いのは顔と声だけにしておけ」
ピタッと止まるウサギの手。俺はすかさず、固まったままのウサギの手を自分のそれで包み込む。
ぎゅっと握って顔の高さまで持ち上げ、僅かに見えている指先に唇を落とした。
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