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「お前の言ってる意味がわからない」
刺々しい空気を醸し出しながらも、言葉はまだ穏やかなリカちゃんが鹿賀に返す。すると、さっきから尽く空気を読まない鹿賀は躊躇うことなく言った。
「僕行くところないし、友達なんて他にいないから困ってたんです。それで、運のいいことに先生に会えた。先生の家なら絶対に綺麗だし、多分お金持ってるでしょう?」
「それがお前に関係あるか?」
「ありますよ。小汚い家に行くより、綺麗な家がいいのは当然です」
にっこりと笑う鹿賀と、明らかに不機嫌なリカちゃん。今すぐ俺だけでも家に帰りたいとは思うが、それをしたらこの後が怖い。
「駄目だ」
再びリカちゃんが鹿賀を拒む。
「じゃあ、その辺の人に声かけますよ。そうしたら売春で捕まるかもしれないですけど」
「それも駄目だ。送ってやるから家に帰れ」
「送ってもらったとしても、先生がいなくなったら抜け出します」
ワガママな俺ですら「それはないだろ」と言ってしまいそうになる鹿賀の返答。眉間を押さえたリカちゃんが、可哀想で仕方ない……けど、家に連れて来るわけにもいかない。
だって、俺とリカちゃんは一緒に住んでいるんだから。さすがに恋人だと言う必要はなくても、どういう関係だと聞かれたら困るのは明白だった。
「あ、もしかして先生って実家住まいとか?それならご両親の許可も必要ですね」
「それでも諦めないつもりなのか……」
「当然ですよ。だって、みんなの憧れの先生と住めるんだから。ついでに弱みも握っちゃえば、これからの生活も楽になりますし」
堂々と言ってのけた鹿賀は、ふんぞり返ってリカちゃんを見る。その姿は、本屋で見た時よりも幼く、別人のようだった。
どうするべきか……最悪、俺が荷物を纏めて実家に帰ればいいんだけど。でも、リカちゃんと離れて暮らすっていうのは嫌だ。
深くため息をついたリカちゃんは、なんとか鹿賀を諦めさせようと言葉を探す。けれど、鹿賀はその様子すら楽しそうに見る。
「先生、僕は別に先生を困らせたくて言ってるわけじゃないです」
「十分困らされてるけどな」
「お願いしてるんですよ。だって先生は僕と約束したじゃないですか」
リカちゃんの眉間に皺が寄り、また更に機嫌が悪くなったように感じた。
鹿賀が言った『約束』が何なのか、窺うようにリカちゃんの服の裾を掴む。
目と目が合ったリカちゃんは軽く笑い、俺の身体を引き寄せた。
「確かに約束はしたけど、それとこれは別。実家じゃないけど家族と住んでるからお前を引き取るのは無理」
背後から右手で腰を抱かれ、それとは反対の左手が俺の手首を掴んだ。驚き、されるがままの俺と鹿賀の視線が合う。
「この子が俺の家族。仲良く一緒に住んでる家に、お前がいたら邪魔」
「家族……兄弟にしては似てないですね」
「兄弟じゃないから。俺の最愛の人」
俺とリカちゃんの左薬指には同じ指輪がついている。鹿賀がそれを見つめ、視線をたどらせ俺へと戻った。
どう見ても女じゃない俺をどう思うのか……というか、堂々と男と付き合って同棲しているなんて言ったバカを、どう怒るべきなのか。
頭が容量オーバーで静止した。パンクするって、こういう意味なんだってわかった。
「先生……」
ゆっくりと口を開いた鹿賀の一言。蔑む言葉か、脅しか嘲笑か…とにかく良くはないであろう一言。生唾を飲んでそれを待つ。
「僕、目の前でセックスされない限りは平気なんで。そういう性癖があるのなら困りますけど、その他は何も気にしないんで大丈夫です」
さらっと受け入れた鹿賀に、俺の限界がきた。黙っていようと思ったけど、さすがに無理だ。
「普通驚くところだろ?!」
思わず口を挟んでしまうと、鹿賀は平然とした顔で俺を凝視する。
「恋愛は自由じゃないですか?海外では、ワニやヤギと結婚した人間もいますし」
「なっ……!それとは別次元っていうか」
「それに。獣姦よりも肛門性交の方がよっぽどノーマルですよ」
頭がくらくらする。ここまで話が通じない相手は初めてで、リカちゃんを見ると片手で顔を覆って呆れていた。
「あ、なんなら2人がセックスする日を前もって教えてもらえると助かります。鉢合わせして気まずいのは、お互い様だと思うので」
さも名案だろうと主張する鹿賀に押し切られる形で、俺とリカちゃんと……鹿賀竜之介の奇妙な3人暮らしが始まったのだった。
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