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家を出た俺が真っ先にすることは1つ。鹿賀を探すことだ。
とりあえず連絡をとろうとメッセージを打とうとして、それが面倒で電話に変える。何回か聞こえたコール音の後に、やっと繋がった相手が電話に出た。
鹿賀がいるのは、駅前にあるファミレス。指定されたそこに向かうと、なぜか店の中じゃなく外で待っていた。
「なんで外にいんの?いくら夜でも暑いだろ」
急いだから汗が滲む。ちょっと涼んで行こうと店に入ろうとしたら、俺の腕を鹿賀が掴んだ。その力がやけに強くて、少しだけ痛い。
「痛いんだけど」
「どうせなら、もっと静かな所にしませんか?ここは僕に合わない」
「は?お前がここに来いって言ったんだろ。なんだよ急に」
鹿賀が前に立つから、店の中が見えない。頑として動こうとしない鹿賀に、諦めた俺は踵を返した。別にどうしてもこの店じゃなきゃ嫌なわけじゃないからだ。
「で、これからどこ行く?」
「え?」
「静かな店に移動するんだろ?どこだよ?」
歩き出して数歩、鹿賀が立ち止まった。
「僕を連れ戻しに来たんじゃないんですか?それなら帰った方が早いと思うんですが」
「お前を連れ戻す?違うけど」
俺が答えると、鹿賀は複雑そうな顔をする。突然飛び出した自分を俺が探しに来たと思ったらしく、意味がわからない、とばかりに俺を見つめていた。
「俺も家出してきた」
余計なことは言わず要領だけを告げると、鹿賀は目をまん丸に見開いて固まった。いつものポーカーフェイスが崩れ、ゲームをしている時によく見る幼い鹿賀になる。
それが面白くて笑うと、今度は眉を吊り上げて怒る。
「なんで?!兎丸くんが家出する必要なんてないのに!」
「だって腹立ったし」
「そんな理由で?ああもう……どうするんですか、これから」
「そんなの決めてるわけないだろ。お前頭いいんだから、俺の代わりに何か考えろよ」
手を額に当てた鹿賀が、深い深いため息をつく。けれどすぐに顔を上げ、俺の肩を掴んだ。
「わかりました。僕が謝るから帰りましょう」
「え、やだ」
「やだじゃなくて!!」
何をそんなに必死になることがあるんだろう。男2人なんだから時間なんて潰せるし、特に危なくもないのに。
それを鹿賀に訊ねると、呆れた顔でこちらを見る。
「あのね、僕まだ高校生なんですよ。もし補導でもされたら、一緒にいる兎丸くんが困るし……それに、預かる約束をした獅子原先生にも迷惑がかかるでしょ」
「ああ……そっか。お前まだ子供だもんな」
「子供って。とにかく、帰りましょう……って、また笑ってるし」
だって、こんな状況で笑わずにいられない。
初めて会った時の鹿賀は万引きをしようとしていて、それを悪いことだと思っていなかった。周りに迷惑がかかるってわかっていながらも、それがどうした?と言っていた。
それなのに今、俺やリカちゃんのことを心配する。自分のせいで迷惑がかかるって、だから歩に謝るって自分から言い出している。
この1ヶ月で、ここまで変わったんだと思うと嬉しくなった。
「お前、可愛いところあるな」
素直に褒めると、鹿賀は顔を真っ赤にして怒った。
「今そんなこと言ってる場合ですか?!」
「はいはい、うるさいって。行くところ探せばいいんだろ?」
24時間開いている店はあるけれど、多分鹿賀は納得しないだろう。万が一のことを考えて、鹿賀が安心して過ごせる場所……そして俺が頼れる人物。
思いついたのは3人だ。
「なあ鹿賀。お前、チビと赤とオッサンのどれが好き?」
「なんですかその質問。比べようがないと思うんですけど……」
「いいから早く答えろよ。もしオッサンだったら、もう寝てるかもしれないだろ」
不思議そうに眉を寄せながらも、鹿賀は「チビ、ですかね」と答えた。もしかしたら鹿賀は小柄な子が好みなのかもしれない……と思ったのは黙っておく。
「わかった。じゃあチビにするか」
開くのはスマホの連絡先だ。さすがに『チビ』じゃなく別の名前で登録してあるそいつの名前をタップし、電話をかける。
「あ、拓海?今から行くから布団の用意しといて。2人分よろしく」
電話先の鳥飼拓海が「えっ?!」と驚いた声を上げた。
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