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ぎらっぎらに太陽が輝き、夏らしく乾いた晴れ空。広場に植えられた芝生も、良すぎる天気に嬉しそうに揺れている中。
俺は地獄に落とされた気分だ。
「……はあ」
ベンチの端に座ったそいつが零したため息が聞こえる。それを吐きたいのは俺の方なのに、偉そうに足を組んで真逆を向いている姿勢が腹立つ。
そろりと窺い見た先には金色に光る髪。このくそ暑い状況で、見たくない色のツートップだ。ちなみに1番が赤色だったりする。
リカちゃんによって強引に対面させられた俺と歩は、これまたリカちゃんによって強引に2人きりにされた。
幸を連れて行ってしまったリカちゃんは、きっとどこかで俺と歩の様子を見ているに違いない。
頭ではわかっている。このままじゃ駄目なことも、こうして無理にでも場を設けなきゃ、俺は後回しにしてしまうってことも。
だからと言って、何の心の準備もなく「思う存分語り合いなさい」と言われても、何を喋ればいいのかわからない。
「……チッ……暑すぎだろ」
小さな舌打ちと共に歩の独り言が聞こえて、肩が跳ねた。別に俺が言われたわけじゃないのに、妙にドキドキしてそわそわして、そして焦る。
何か言わなきゃ……何か、何か。会話の初めって何を話すのか考えて、思いついたのは『挨拶』で。
そうだ、とりあえず挨拶すればいいんだ。挨拶なら歩の機嫌を損ねることもないし、怒らせることもないだろう。
「こっ、こん……」
言いかけて止める。というか、俺たちが今までまともに挨拶したことなんてあっただろうか。こんにちは、なんて普通友達同士で言うことなのだろうか。
ぐるぐると考えて口を開きっぱなしだった俺を振り返った歩が、眉を顰めた。
「こん?こんって何だよ」
「こっ……こん…………根性あるよな、芝生って」
「──は?」
あからさまに「お前急に何言ってるんだ?」って顔をされ、ものすごく後悔した。
どうして俺は芝生のことを歩に話したのか、いや本当は芝生のことなんて何も思ってないのに、偶然出たのが芝生だったのか。
ここに芝生を植えたやつを呪ってやりたい気分だ。
「あ、いや……うん。なんでも、ない……かな」
とりあえず言ってみたはいいものの、歩の眉間の皺は消えない。それは当然のことだろう。
完全に入り口を間違った俺は、口元を引き攣らせて笑うしかない。ひくひくと動く口の端は、切れてしまいそうに痛い。むしろ俺の存在が1番痛い。
完全に心が折れてしまった俺を見つめる歩の視線。何も考えていないその瞳が、微かに歪む。
「慧」
そんな凶悪な顔で、そんな怖い声で俺を呼ぶな。そうは思っても、ここに慧は俺しかいないのだから無視はできなくて。
「……なに?」
「お前ってさ本当に……バカだよな」
しみじみと断言されると、言い返せない。
ああ、俺はバカだよって認めたくなった。
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