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14.リカちゃんスイッチ
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俺の専属マッサージ師は、専属だけあってかなり的確に良いところを突く。
学生の頃には眠ればとれていた疲れも、今じゃ日々の生活で積み重なっているらしい。反発したい心とは裏腹に、凝り固まった身体はリカちゃんの指を嬉々として受け入れてしまった。
身体が従えば心がそうなるのも時間の問題だ。
それが証拠に、初めは逃げ腰だったはずなのに、気づけば全身から力が抜けているじゃないか。我ながら情けない。
けど気持ち良すぎるのが悪い。
「ああ……そこ、そこ……気持ち、いい」
肩のラインから背骨を沿って下へ下へ。時々、指の力が強くなるのは、そこがツボってやつなのかもしれない。
「んっ。痛い……のが、気持ちいい……はぁ」
さすがリカちゃん。俺のリカちゃん。
一体どこでこんな特技を身につけたのかは知らないけど、素人とは思えない滑らかさで手が滑る。
俺の肌を傷つけないよう、けれど物足りないとは思わせないよう。優しさと力強さの両方を兼ね備えたその指が動く度、俺の口からは自然と吐息が漏れた。
「やばい。マッサージって……こんなに気持ちいいんだな。癖になりそう」
リカちゃんでこんなに気持ちいいなら、プロにしてもらったら溶けるんじゃないだろうか。
むくむくと湧き上がる興味と好奇心に、魚住あたりに良い店を紹介してもらうのもアリかもしれないと思った。それか、桃ちゃん。桃ちゃんなら清潔そうな店に詳しそうだ。
頭に浮かんだ計画をぼんやり考えながら、半ば夢見心地でいると突然リカちゃんの指が止まった。
そして。
「ねぇ、慧君」
急にトーンの落ちた声が聞こえた。
物静かで落ち着いていて、けれども有無を言わせない声が。
全く荒くなくて声色は優しいのに、それなのに身が引き締まる。
「ちょっと慧君に聞きたいことがあるんだけど」
俺はこの声に弱い。怒られているわけでもなく、叱られているわけでもないのに、どうしてだか身体がビクッと跳ねる。
長年の自然現象で、解されたはずの凝りが蘇るような気がして、それで……。
「もしかして。癖になって、あわよくば店に通おうとしてる……なんて、まさか俺の思い過ごしだよね?慧君が俺以外の人間に身体を触らせようとしてるなんて、まさか……だもんね」
どうやら俺は、得体の知れないスイッチを押してしまったらしい。
別名『リカちゃんの意味わかんない起爆スイッチ』
振り返った背後では黒い悪魔が黒い笑みで微笑んでいた。それはそれは、震え上がるぐらい美人だ。
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