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93.Darling. Oh,my Darling !
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時間にして10分もかからなかったと思う。淡々と話していたリカちゃんが『失礼します』で締めて電話は終わり、スマホを枕へと放り投げて一言。
「慧君のせいでズル休みしちゃった」
いたずらをした後みたいな楽しそうな笑い方。俺を責めるようなことを言っているのに、その顔はちっとも怒ってない。それどころか優しすぎる顔だ。
「リカちゃん……今日、なんて言って学校を抜け出してきたんだ?」
「今朝起きたら目眩と頭痛と痙攣が止まらなくて、なんとか出勤したものの、飲まなきゃいけない薬を忘れたから帰るって言ったけど?」
「それアウトじゃない?なんで仮病ってバレないんだよ」
「日頃の行いと演技力のおかげかな。ちなみに、悪化したのか家に着いた途端に吐血したって言ったら、明日は休んでくれだってさ」
俺の手を離し、ベッドの空いたスペースにリカちゃんが寝転ぶ。そして自由になった両手を広げて笑った。
「ほら、おいで」
聞きたいことは山ほどあって、どうして蛇光さんが同じ匂いをさせてたのかとか、蛇光さんを手当した時のこととか、いつも2人はどんな話をしてるのかとか。
あの女のことをどう思ってるのかとか、俺のことをどう思ってるのかとか。俺に呆れてるんじゃないかとか、俺はダメなやつだって怒ってないかとか、もう疲れたんじゃないかとか。
とにかく聞きたいことだらけなのに。それなのに、優しくされると俺はダメで。
「リカちゃん」
名前を呼んだ声が微かに震える。俺を見るリカちゃんがちょっとだけ困ったように笑って、広げていた腕を「ほら」とさらに大きく開いた。
たまには休めって言っても、自分の為には休まないリカちゃんが、俺の為にならズル休みしちゃうから。
そんなことされちゃうと、ぐらぐら揺れていた気持ちがリカちゃんに向かって一直線に走っていくから。
ダメな俺のせいで、リカちゃんまでダメになったらどうしよう。
リカちゃんと一緒にいても俺は成長できてないし、それどころかリカちゃんの価値を落としてる気もするけれど。
でも、俺の頭は考えることをやめた。優しくしてくれるならそれに甘えて、嫌なことは考えなきゃいい。そうすることにした。
「慧君」
思考を投げ出した瞬間に名前が呼ばれる。
勢いよく滑り込んだ腕の中はあたたかくて、男の俺を包み込んでも余裕がある。でもその余ったスペースには、誰も入れない。
ここは、俺だけの場所だ。
「…………っ」
漏れた俺の嗚咽に気づいたリカちゃんが、腕の力を強める。足もしっかり絡みついてきて、離れたくても離れられないようになる。
「慧君。大丈夫だから。明日は元気になって、きっと楽しい1日を過ごせるはずだから。大丈夫、嫌なことは起きない」
「……ほんとに?」
「ああ。俺は慧君には嘘はつかないからね」
こうして雁字搦めになって、苦しければ苦しいほど楽になる。でもまだ足りない。まだまだリカちゃんが足りない。
弱った心に特別対応は効果抜群で、俺はすんなりと願望を口にした。寧ろストレートに言いすぎたかもしれない。
「俺、リカちゃんとエッチしたい」
言い訳させてもらえるなら、俺が本当に言いたかったのは「リカちゃんと、もっとくっついていたい」だ。
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