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125.初体験
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全くもって自慢にならないけれど、俺の初体験とやらは早かった。
慧には口が裂けても言わないが、人並みより経験人数は多いと思うし、これも慧には死んでも言わないが、今まで色々なシチュエーションで情欲を交わしてきたと思う。
でも、今この瞬間。目の前で起きているようなことは初めてだ。まさかこの年齢になって迎える『初体験』が残っていただなんて、驚きを通り越して感心してしまう。
もちろん、新しい扉を開けてくれた兎丸慧に対して。
「ン……あっ、は……や、うぁ、アッ」
小刻みに前へ後ろへと揺れる腰。中途半端に縋りつく手。動きにくいという不満を顕著にした顔。
俺に跨った慧の痴態に、内心でため息を吐く。
噛まれたモノは、拙い愛撫で再び硬さを取り戻したけれど、それでも奥を暴くには足りない。少しでも激しく動けば抜けてしまいそうだ。
だから遠慮がちになる慧の腰遣いに物足りない。
自分から跨り、自分で望んで迎えたくせに、後のことを何も考えていないから対処に困る。心も身体も迷子な恋人に、俺はそっと手を伸ばした。
「慧君、もう意地を張るのはやめて、俺に任せればいいのに。動きづらくて物足りないんだろ?」
「うるっ、さい……なんにも喋るなって、ンンっ、言ってるだろ」
「でもね。慧君がいきなり入れたから、こっちも辛いんだけど……っ、こうも締め付けられすぎると、俺も痛い」
ギチギチと鳴る音まで聞こえてきそうなほど狭い中に、吐く息が短く切れる。いくら抱かれ慣れてるとはいえ、あまりにもお粗末な前戯じゃ先に進むことすらできない。
けれど、後に退くこともできない。微かに存在する快感を掻き消す痛みに、俺と慧はお互いに眉を顰めていた。
「慧君。お願いだから、一旦抜いて」
「うるさい……ッ、は、はっ……ァ、いっ」
「それ以上動くと本当に傷つくから……ね、慧君」
「うるさい、うるさいうるさい!!」
ドン、と強く胸を打たれる。不意をつかれての一撃に息が詰まり、喉の奥がヒュウ、と鳴った。
それをした張本人は、硬く握った拳を俺の胸の上に置き、肩で息をする。大きく吸って吐いて。吸って、吸って、苦しそうに吐いて。
「慧、もうやめよう。このまま続けても2人とも辛いだけだ」
心の痛みに耐えて、さらに身体も痛めつけて。限界だと叫べずにいる姿にこちらから歩み寄れば、裏があると疑われる。できるだけ優しく接すれば何故か苛立たせ、逆に気付かないふりをすれば悲しませる。
きっと、俺が何をしたところで、今起こっている事態は良好へとは進まない。それなら全てを受け入れてみようと思った。
けれど実際に自分を傷つけてまで事を成そうとする慧を目の前にすると、決意が揺らぐ。受け止めようと決めた手が、慧を静止すべきか悩む。
その隙をつかれた。
「──っ、」
どちらのものか分からない呻き声が、冷めた空間に響く。
その理由は、俺のモノを強引に咥えこんだ慧が、さらに腰を落としたからだった。痛みしか感じない繋がりに慧の目は涙で潤み、眉が寄る。
「なんっ、で……なんでリカちゃんまで俺の思い通りにならないんだよ!」
悲痛な叫びに首を振っても見てもらえない。
「なんで。なんで俺だって……ッ、頑張ってるのに。必死に、頑張ってるのに!」
分かっていると言ったって、ちゃんと見てると頷いたって信じてもらえない。
「な……、んで!なんで俺だけ……っ、俺だけが、は、ァ、俺が……俺だけが1人でッ」
1人じゃないと教えたいがために名前を呼んでも届かなくて、抱きしめようとした腕は振り払われる。肌を弾く音を合図に2人の視線が合わさっても、すぐにそらされる。
もう視界に入れるのですら、嫌がられてしまったのだろうか。こんなにも想って、誰よりも大事にしてきたはずなのに、今の俺は慧を抱きしめることも出来ない。
慧の為に生きると誓ったのに、それを奪われる日がくるなんて予想外だ。
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