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「慧、大丈夫か?」
「ほら。水飲めよ」
大人の話がある、と鷹野を連れて桃ちゃんは行ってしまった。俺は残る!と言い続けるリカちゃんを引きずって。
「あり、がと…」
歩に渡された水を飲む。緊張が解けて力が抜けた俺はヘナヘナとその場に座り込んだ。
「悪かった。本当はもう少し早く助けたかったんだけど…鷹野が無理矢理してるって証拠がいるって言われてさ」
「でもでも!リカちゃん先生はすぐにでも乗り込むって聞かなかったぞ!!俺と歩の2人で必死に抑えつけてたんだから!」
「そう、なんだ」
鷹野を前々から怪しんでいたリカちゃんは、鷹野がここの鍵を取りに来た事を聞いてすぐに行動に移したらしい。
美術部の鷹野が、好きに使えるこの部屋を利用しないわけない。
その事を知っていて、確かな証拠を握るまで様子を見ていた。
嫌がる俺を鷹野が無理矢理襲う…そんな証拠を。
「俺、鷹野はリカちゃんを好きなんだと思ってたんだ」
「俺も。でも兄貴は気づいてたっぽい。だいぶ前から俺に鷹野と慧に注意しろって言われてたし」
「あ!だから最近の歩、真面目に朝から来てたのか!」
「まぁな。兄貴に逆らうと色々面倒くせぇんだよ。
兄貴は表立って行動出来ないから俺が代わりにな」
面倒くさいと言った歩は、心底嫌そうな顔をする。
きっと今までリカちゃんに散々されてきたのを思い返したんだろう。
あんなに性悪な兄貴を持ったからこそ歩はこんなに大人びているんだろうと思った。
「けど学校じゃなかった時はどうする気だったんだ?」
拓海の言う通りだ。
たまたま俺が家を嫌がったからいいものの、もし大人しく付いて行ってたら?
拓海と二人揃って歩を見れば、無表情の歩がポケットからタバコを取り出し口に咥える。
「ちょ!さすがに教室では吸うなって」
すかさず拓海がそれを奪う。チッと歩が舌打ちをしたが、俺は気にせず答えを促した。
「なんで俺が鷹野の家に行かないってわかったんだよ」
「あぁ。それは無いって言い切ってたけど?慧はクソ生意気で変にプライドが高いくせに怖がりだから、相手のテリトリーに入るなんて出来ないって」
…あの性悪野郎。
気遣ってくれてたのは嬉しいけど一言余計だ。
「ってかさ…リカちゃん先生と慧と歩の関係ってなんなの?そこんとこ俺なんも知らねぇんだけど」
「は?何も知らなくて今まで話してたのか?」
「うん。なんかノリで」
はあぁぁ…、大げさにため息をついた歩が大雑把に説明する。
拓海が驚いたり、赤くなったり、泣きそうになったり…百面相するのを見ながら、俺はようやく訪れた平穏に安堵した。
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