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「愚痴ならいつでも聞いてやんぞ」
「……はぁ?」
満面の笑みでそう言われ、力が抜ける。
人がこんなに悩んでるのにヘラヘラと…。
「お前見てると悩んでるのがバカらしくなるわ」
「だろ?俺ってば最強の癒し系じゃん?」
「1回も思ったことないけどな」
ひでぇ!と騒ぎケラケラ笑う拓海。
気づかないうちに俺までつられてしまいそうになった。
「癒し系かどうかは別としてお前のおかげで気は紛れた」
「おう!お礼はコーラで許す」
「誰がするかよバカ」
立ち止まっても仕方ない。逃げるなら追えばいい。
明日はバイトが休みだからもう一度押しかけてやる。
そう思わせてくれた親友の髪をグシャグシャにしよう…として、今日も洒落て立たせているから諦めた。
その代わりに丸くて綺麗な額に指を弾く。
「痛って!!」
「はい、今お礼したからコーラは無しな」
「なんで礼がデコピンなんだよ!」
涙目で額を押さえる拓海。
本当見ていて飽きない。
次の休み時間にコーラを買ってやったのは、ただの気紛れだ。
尻尾振って喜ぶその姿が、なんだか桃さんと似てて…
でもそれは俺の前じゃなく兄貴と美馬さんの前の桃さんで。
もしも俺が兄貴ならば。
もしも俺が美馬さんならば。
もしもあの人の心の声が聞こえたなら。
平然を装っている裏で、叶うわけのない『もしも』が永遠と続く。
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