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公園のベンチに並んで座るあたし達は完全に浮いていると思う。
周りには愛を睦いでいるカップルや犬の散歩をしている人しかいない。
次第に減っていく人、広がる宵に映える電灯の明かりが印象的だ。
「これ、さっきのお礼」
歩ちゃんにコーラを差し出すと、反対の手に持っていた自分の分のコーヒーを奪われる。
「ちょっと!歩ちゃんはコーラなんだけど」
「俺だってコーヒーぐらい飲めます」
「ブラックなんて飲まないじゃない」
「こんぐらい飲もうと思ったら飲めます」
何をムキになっているのか頑なに譲らない。
仕方ないと開けたプルトップからプシュッという空気の抜ける音が聞こえた。
「甘…」
「苦…」
思わずハモってしまってお互いに顔を見合わす。
少し気まずそうな彼はやっぱりまだ高校生だ。
「桃さんって…どんな高校生でした?」
あたしから目を逸らした歩ちゃんは、左手で握った缶を左右に揺らしながら反対の手でタバコを取り出す。
誕生日にリカから貰ったらしいジッポで火を点け、フゥッと一息。
リカが歩ちゃんにソレを送った時は、高校生には早すぎるだろ…と思ったのに。
イヤに似合うその様子に獅子原兄弟の血筋の恐ろしさを感じる。
間違いない。歩ちゃんの10年後はアレだわ。
「どんなって……今と大して変わらないけれど。
リカもそう言ってるでしょ」
「まぁ…。なんか桃さんの高校時代って想像つかねぇ」
「当たり前よ。10年も前ですもの」
甘すぎて手に持ったコーラが進まない。
このままじゃすぐに温くなってしまいそう。
疲れた身体に炭酸はイイけれど求めてるのはコレじゃなく苦く黄金色のアルコールだ。
いつからそうなったんだろう。
「じゃあ大学生の時は?」
「別に普通よ。その頃には弁護士目指してたから必死だったわ。起きて大学行って勉強、帰っても勉強…今思うと味気ないわね」
自分を認めてほしくて。
男のナリして中身はこんな自分でもバカにされたくなかった。
敢えて難しい道を選び、成し遂げることで存在意義を示したかった。
本当に必死で必死で……何も見えてなかったあの頃。
「初めて男と付き合ったのは、いつですか?」
「……教えない」
初めて。
何もかも初めてで、けれど上手くやれていると思っていた馬鹿な自分。
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