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どこまでも言わせたがりなリカちゃん。
それなら言ってやろうじゃねぇかよ…と、さらに早口で捲し立てる。
「婚約者なんだろ?そんなに言わせたいなら言ってやるよ、お前は俺の婚約者だバーカ。これで満足か?アァ?」
ただのケンカ口調にしかならなかったが、しっかり聞き取ったらしいリカちゃんが吹き出した。
「てめぇ…笑ってんじゃねぇ」
『いや、なんで俺絡まれてんだろうと思って』
「あ?最初に絡んできたのはお前だろうが」
『うん。もっと慧君と絡み合いたいな』
…最後のは絶対に意味が違う。
いつの間にかまたリカちゃんのペースに巻き込まれそうになる。
「実家でバカなこと言ってんじゃねぇよ。
大嫌いだって言ってたヤツに苛められんぞ」
『だから俺が苛められるタイプに見えるか?
むしろ可愛い可愛いウサギさんを苛めたくて悶々としてんだけど』
「だからっ!!!そうじゃなくて俺はお前のことを心配して言ってんだよ!」
大嫌いなヤツがいて、本当は帰りたくなさそうだったリカちゃん。
嫌いなヤツは徹底的に無視するタイプのリカちゃんが我慢してでも会わなきゃいけない相手。
俺の知らないリカちゃんの世界。
そしてそれを教えてくれそうにない…というより話題にすらしたがらない。
なんで教えてくれないのか、聞けば教えてくれるのか。
どうして…聞けないのか。
『慧』
理由はわかってる。
『早く会いたい』
少しだけ震えるリカちゃんの声。
泣いているわけじゃなく、何かを噛み殺しているような静かな声。
『俺は慧だけが好きだよ』
今すぐそっちに行って抱きしめたいと思った。
いつものように守られるんじゃなく、リカちゃんを俺が守りたいと思った。
「お前はどこにいても恥ずかしいヤツだな」
行けない代わりに出た言葉は思い描いていたのとは違う。それでも遠く離れたリカちゃんに届けたい。
「俺だってリカちゃんだけ」
小さすぎる俺の言葉に『ありがとう』と応えたリカちゃんの声は、やっぱり震えていた。
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