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叫び声と共に現れた桃ちゃんをリカちゃんは無言で見つめた後、躊躇うことなく追い出そうとする。
「ちょっ、ちょっと!!」
「うるさい。お前が来ると近所迷惑だし俺がイライラするし俺が鬱陶しいし俺が面倒くさい」
「最後全部あんたの都合よね?!こっちは困ってんだから話ぐらい聞きなさいよ!」
玄関の扉を閉めようとするリカちゃんと、させまいと食らいつく桃ちゃん。
廊下からそれを見守っていた俺と桃ちゃんの視線が合う。
必死にしがみついていた桃ちゃんの目が俺を見て潤んだ。まるで捨てられた子猫のように俺を見つめる。
「ウサギちゃん……」
「っ!」
「桃!!コイツに頼っても無駄だからな。俺は絶対にお前を上げない」
リカちゃんにそう言われながらも桃ちゃんは俺を見つめ続ける。
「ウサギちゃぁん…お願い……話だけでも聞いて?」
「あ…あ……」
「ウサギもコイツを見るな!」
「お願いウサギちゃん!!」
その必死さに……俺は折れた。
そっと2人に歩み寄り、リカちゃんの手を握る。
俺と目が合ったリカちゃんはチッと舌打ちをした後、込めていた力を抜いた。
勢いよく開いたドアから桃ちゃんが転がり込み、体勢を直して俺達を見て笑う。
「ふふっ。やっぱりリカはウサギちゃんに甘いわね!!あたしの作戦勝ちよ!」
そう言ってスタスタとリビングまで向かっていく桃ちゃん。いつの間にか脱いだ靴を揃えて置くのは忘れない。
「お前……後で覚えてろよ」
「なんで俺なんだよ?!」
「お前が近くにいたら危なくて手離すに決まってんだろ。怪我させるわけにいかねぇからな」
ブツクサ言いながらリカちゃんもリビングへ向かう。
その背中を見ながら、俺ってなかなか愛されてんじゃん…とほんのり温かい気持ちになった。
「ちょっとちょっと!!なんで冷蔵庫にビール無いの?」
勝手に冷蔵庫を覗き込みながら桃ちゃんが言う。それを見るリカちゃんの視線は冷たいを通り越して氷のようだ。
「俺禁酒中だから」
「あら?あんたまた何かしでかしたの?」
「うるさい」
「それとも、もしかして体型維持の為?」
「お前と一緒にすんな。心配されなくてもここ数年体型は変わってねぇよ」
冷蔵庫から桃ちゃんを引き剥がしたリカちゃん。けれどその手には炭酸水が握られているから優しい。
グラスにそれを注ぎ、桃ちゃんに手渡す。リカちゃんからグラスを受け取った桃ちゃんが俺の隣までやって来て座った。
桃ちゃんの腕が俺に当たる。
桃ちゃんはいつも通りだ。けど、今の俺は…触られるのはちょっと困る。
その理由は言えない。
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