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「そんな顔しないでくれ」
美馬さんが俺に向かって言う。
「今のリカが幸せそうなのはウサギ君のおかげだと思ってるから。俺や桃がどうにも出来なかったのを君が変えてくれた。本当に感謝してるんだ」
「俺は何も…」
「リカにとってウサギ君は無くてはならない。俺がこんなことを言うのは変かもしれないが……これからもリカを頼む」
美馬さんの言葉は嘘がなくて真剣で思わず背筋が伸びる。俺に向けられていた視線が今度は歩に向かう。
「歩君も。桃を前に進ませてくれてありがとう。ああ見えてあいつは頑固だし、そのくせ臆病なんだよ。何かあったら殴ってでも目を覚まさせてやってくれ」
「いくら俺でも自分の恋人を殴るのは無理ですけど」
「大丈夫だ、あいつは慣れてるから」
悪戯に笑った美馬さんが自分の手のひらを見つめた。
きっと。きっと美馬さんはリカちゃんや桃ちゃんの見てないところで辛い思いをしていたんだと思う。
リカちゃんと桃ちゃん。どっちも辛い過去があって、それを美馬さんは知っていて。
口数は少ないし態度もそっけない美馬さんだけれど本当は優しくて心配性なんだ。
落ち着いた雰囲気の中に熱いモノを感じる美馬さんの言葉。
歩を見れば向こうも俺を見ていて目が合う。
「悪かった。お前に当たって」
「俺も言い過ぎてごめん」
「うん……やっぱり似てないな。リカと星一がケンカした時はもっと面倒くさかったぞ。弟の方がよっぽど聞き分けがいい」
しみじみ言う美馬さんが、真面目すぎて変に笑ってしまう。歩も同じらしく頬を緩ませながら笑いを堪えていた。
「さて、と。そろそろ俺の話をしていいか?」
今度は歩の分も用意して2人ともにグラスを手渡す。
それを受け取った美馬さんがゆっくり口を開く。
「実は聞きたいことがあって」
「聞きたいこと?俺に?」
「いや、ウサギ君と歩君の両方に」
だから歩も一緒だったんだ。
じゃあ、なんでアイツはいないんだ?
「………拓海君は」
美馬さんの口から、ここにいない拓海の名前が出る。
「拓海君は…いつ父親になるんだろうか?」
「「は?」」
間抜けに口を開けて固まる俺と歩とは対照的に、美馬さんは真剣そのものの顔をしていた。
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