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「…………良かった、いた」
リカちゃんが廊下に突っ立ってる俺を見て安心したように笑う。
玄関の扉にもたれながら肩で息をし、珍しく髪を乱すその姿に俺の足は洗面所を通り越して玄関に向かっていく。
「お前さ、かけ直したのに電話には出ないしそのうち繋がらなくなって俺がどんなに焦ったか───…」
リカちゃんの言葉途中で俺は堪らずにその胸に飛び込んだ。甘い匂いに混ざる汗の匂い。
この暑い中、汗をかくのが嫌いなリカちゃんが俺の為に焦って帰って来てくれたんだと思うと嬉しい。
「慧!お前俺の話聞いてるか?」
「うるさい!ちょっと黙ってろよ!!」
抱きつく俺をリカちゃんは右手だけで支える。
身体に回した手に更に力を込めれば、持っていた鞄を床に置いて両手で抱きしめてくれた。
ドスッと聞こえた音がその鞄がどれだけ重たいのかを教える。
しばらく無言のまま抱き合って、リカちゃんが俺の身体を押し返した。
「とりあえず部屋に上がらせて。
すげぇ疲れたから座りたい」
「やだ。もう少しだけ」
「本当にどうした?」
リカちゃんの訝しげな視線が俺に向く。目線を合わせるように屈み、近くなった顔。
我慢してた分だけ気持ちは強くなり、どうしようもなくて俺からキスをした。
「ん…」
漏れるリカちゃんの声がもっと聞きたくて舌を潜り込ませる。俺からのキスは上手くは出来ないけれど、少しでも気持ちが伝わるように丁寧に、でも力強く。
「慧」
スイッチの入ったリカちゃんが俺の身体を押しながら乱暴に靴を脱ぎ捨てた。追いやられた俺は廊下の壁に背を預けリカちゃんのキスを一身に受ける。
俺の下手なソレとは違う官能的なキスに、自分から仕掛けたくせに逃げたくなる。
「リカちゃんっ…リ、んんっ」
「ちゃんと集中して」
首に回した腕が外れないよう、出来るだけ触れていられるよう身体を寄せて続ける甘いキス。
舌と舌が絡まり合う度に漏れる水音。
息継ぎで離れるのすらもどかしくて追いかける俺を制したリカちゃんが「なるほどね」と呟いた。
「慧君さ、俺のタバコ吸った?」
「あ…あれは」
「お前の性格ならストックから出したんじゃなくて吸殻かな?」
まるで名探偵のように言い当てたリカちゃんが俺の前髪に触れる。そして現れた額に向けて指を弾いた。
「痛ぁっ!なにすんだよ!!」
「それはこっちの台詞。なに隠れてタバコなんて吸ってんの。まさかお前までグレたんじゃねぇよな?」
俺にデコピンをしたリカちゃんは置いてあった鞄を手に取り、俺を振り返ってニッと笑う。
自信満々な笑み。伸ばされた手は俺に向けてだ。
「おいで。悪戯大好きな子猫ちゃん」
「誰が猫だよ」
「お前は俺専用のウサギで子猫だからね」
クソ寒いセリフを無視して差し出された手を取ればいきなり身体が引かれる。
その反動を借りて俺の身体は、まるでそこが定位置かのようにすっぽりと収まる。
どこにって…リカちゃんの腕の中にだ。
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