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「もう何度も言ったけどさ、俺はお前の為に生きてるんだってば」
「それ何回も聞いたっつーの」
「でもまだ意味はわかってないんだろ?」
リカちゃんが目を伏せる。長い前髪が邪魔なだけなんだろうと思ったけれど、少しだけ寂しそうに見えた。
今の言葉にどんな意味がある…って言葉そのままだろ。
どうせいつものキザなセリフの1つに決まってる。
「そんなクソ寒いこと言うなら俺の為に死ねるって言えよ」
君の為なら死んでもいい…よくドラマとかで聞くセリフ。実際は絶対に死ななくてハッピーエンドになるんだけど、でもすげぇ好きなんだ!ってことは伝わる。
リカちゃんが目を伏せたまま首を振った。
「悪いけどそれは無理。もうそこには戻れない」
「なにそれ。所詮その程度かよ」
別に言われたかったワケじゃないけど。まぁちょっとは聞いてみたいなって思った…んだけど。
肩透かしを食らった気がしないでもない。
「慧君にはまだわかんねぇだろうな」
「何が?」
「秘密」
ツンと俺の鼻を突いて突き放す。立ち上がったリカちゃんに、このまま帰るんじゃないかと思って俺は服の裾を掴んで引き留めた。
「帰らないって。続きも説明するから何か飲みながら話そう」
「いらねぇ。それより早く聞きたい」
離すまいと力を込める俺を見てリカちゃんが苦笑いを浮かべた。
「スーツに皺寄るんだけど」
「……それなら脱げばいいじゃん。どうせこの後脱ぐことになるんだし」
瞬時に俺の言いたい本当の意味を悟ったリカちゃんによって、スーツを掴んでいた指が1本ずつ解かれる。
その代わりに長い指が絡まってくる。
前屈みになったリカちゃんが俺を覗きこんで見た。
「慧君にそういうの言われると期待しちゃうんだけどいいの?」
まだ何も教えてもらってないけど、リカちゃんが『俺以外いらない』って言ってくれるだけで安心する。
歩や拓海と違って俺はまだ先のことが考えられない。
1人だけ置いていかれていそうな中、リカちゃんの傍にいれば全て忘れられる。
俺にとってのリカちゃんはそんな存在。
「リカちゃん」
名前を呼べば黙って笑いかけてくれる。
「あの人のこと知りたいから教えて」
そう素直に聞けば「いいよ」と頷いてくれる。
「その……続きは向こうで」
俺の視線の先にあるドアは、いつも2人で眠っていた部屋に続く。そんなところに自分から誘うのは照れる。
「やっばぁ…慧君さぁ、自分から誘ったってこと忘れんなよ」
「さ、誘ってねぇ!!俺はただっ」
「だめ。完全にスイッチ入っちゃったからごめんね?」
妖しく笑ったリカちゃんが俺を抱え上げた。
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