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「迷子になったんだってさ」
リカちゃんに抱き上げられた男の子がギュッと首にしがみつく。この数秒でここまで信用させるリカちゃん…一体何を言ったんだろう。
男の子がリカちゃんに耳打ちし、それを聞いたリカちゃんが声を上げて笑った。リカちゃんがこんな風に笑うのは珍しい。
2人で俺を見る…のはなぜだ?
「このお兄ちゃんは宇宙人なの?って。何言ってるか全然わからないし僕の言う事も伝わらないって言われてるぞ」
「はぁ?」
「子供の使う単語ぐらい理解しような。帰ったら俺が直々に教えてやるよ」
なんで知らない場所で、知らないヤツ…しかも子供にバカにされなきゃなんねぇんだよ!
リカちゃんに抱きついているクソガキを睨む。すると隠れるようにリカちゃんの髪に顔を埋めた。
「こらこら。弱い者イジメすんなって言ったろ」
「苛めてねぇ!」
「そうやって怒るから泣かせるんだよ」
男の子を宥めるリカちゃんはすげぇ慣れてて。子供は嫌いだって前に言ってたはずなのに、そんなの微塵も感じさせない。
むしろお前本当は子供いるだろ?ってぐらい違和感がない。
「お前、慣れすぎじゃね?」
「まあ小さい子の面倒みてたからな」
やっぱり謎だらけのリカちゃんの過去。
俺の知らないところで…まさか?!
頭にリカちゃん似の赤ちゃんを抱くリカちゃんの姿が浮かぶ。
「言っとくけど隠し子なんていないから」
「え…じゃあまさか子持ちと?!」
「なんでそうなる。アレだよ、アレ」
アレと指さすのはタバコを吸い終わりこっちへ向かってくる金髪。ソイツがダルそうに歩く度、金色が揺れてキラキラ光る。
「歩が小さい頃は俺が面倒みてたからね。うちは共働きだったからアイツのママは俺みたいなもんだ」
「紛らわしい…」
「どこが。それよりもお前の想像の方がぶっ飛びすぎだろ。どう考えて俺に隠し子がいると思うんだよ」
どう考えてもいそうだけどな…。澄ました顔して立つ謎だらけの男を見る。髪を引っ張られて痛いと笑いながらジャレてる姿…とても子供が苦手そうには見えない。
「リカちゃんって本当に子供嫌いなのか?そうは見えねぇんだけど」
「あー…嫌いというより苦手なだけ」
「苦手?苦手そうにも見えねぇよ」
俺には全く懐かなかった男の子がリカちゃんにはすぐに懐いて笑いかける。苦手とは真逆だと思った。
そんな俺にリカちゃんは言う。
「だって子供って純粋すぎるだろ?なんか自分が悪魔みたいに思えてきてさぁ…良心が痛むんだよ」
キャッキャと笑いながら、まだリカちゃんの髪の毛で遊ぶ男の子。柔らかい黒髪が乱れ、計算され尽くした完璧な髪型が崩れていく。
「こう無邪気に笑ってるの見たら思いきり泣かせたい…そんなこと考える自分は性格悪いんじゃないかって悩む」
「悪いんじゃないか、じゃなくて悪いんだよ。どこにそんなねじ曲がった目で子供見るヤツがいんだよドS」
俺の代わりに歩がすげぇ嫌そうにツッコミを入れた。
その通りだから俺は何も言えなかった。
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