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結局リカちゃんが家に帰ってきたのは次の日だった。
桃ちゃんの家にいるってわかっていたからか、前ほどイライラはしていない。
帰ってすぐ家にいる俺を見つけたリカちゃんが首を傾げる。
「俺の家で何してんの?」
「お前を待ってたんだよ!」
俺が座ってたソファじゃなく、ダイニングテーブルのイスに座る。そしてポケットからタバコを取り出した。
いつものシルバーのケースじゃなくて前みたいに箱のままで、懐かしい気持ちより胸が痛くなる。
少し沈黙があってリカちゃんが口を開く。
「どうするかもう決まったのか?」
リカちゃんにしては珍しくストレートすぎる問いかけ。だから俺もストレートに答える。
「お前いい加減にしろよ。そういう冗談笑えねぇんだけど。どうせならもっとマシなの言えよ」
やっぱりどう考えてもあの言葉が本気に思えない。
リカちゃんが…あんなに俺に可愛い可愛い言って、わざわざ抜け出してまで会いに来たリカちゃんが俺から離れるなんておかしい。
また手の込んだいたずらに決まってる。それしかありえない。
「俺があんな冗談言うわけない。笑えなくても本気」
タバコを吸いながら淡々と続けるリカちゃんはすげぇ落ち着いてて、全然ニヤニヤしてなくて真顔だった。
「お前はなんか勘違いしてる。俺は別に優しくもないし人情深いわけでもない。ましてや関係ないヤツなんて興味も何もない」
「関係ない…ことない」
「お前が先に言ったんだろうが」
売り言葉に買い言葉。俺がよくしてしまうことを根に持ってるのかリカちゃんはなかなか許してくれない。
でも今回のは俺が悪かったって自分でもわかってる…だから謝ろうと思った。
思った、のに。
「あれで目が覚めた。俺のしてきたことはお前にとって、ただのお節介なんだって十分わかった」
「そんなんじゃなくて!」
「滑稽だよな。年上だから俺がしてやらなきゃって…本人はそんなこと望んでないのに」
違う。お節介なんかじゃないし本当に嫌だなんて思ってない…ただ言葉にできないだけで、心の中では感謝してるんだ。
俺だけじゃ今頃は父さんとも恒兄ちゃんとも話せなかった。きっと会うことも避けてた。
全部リカちゃんがいたから。リカちゃんが俺の為にしてくれたからなのに。
「言いたいことがあるなら言えよ」
俺をまっすぐに見る黒い目はすげぇ冷たくて怖い。
次の瞬間にまた「いらない」って言われそうで俺は必死に言葉を紡ぐ。
近い大学を選んだ理由がリカちゃんとできるだけ一緒にいたいからだってこと。
関係ないって言ったのは勝手に母さんと俺を会わせようとしたから。
今の俺にあの人は必要ない。俺に必要なのは1人だけ。
俺はリカちゃんがいてくれたらいいんだって、何があってもリカちゃんを選ぶって。
そう俺が言えば言うほどリカちゃんの目は余計に冷たくなって顔は俯いていく。
そして、とうとう俺を見なくなってしまった。
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