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「………リカちゃんに離れるかって言われた」
ボソボソと言った俺に拓海が驚き、歩は固まっている。
「なんだよ。何か言えよ」
何も答えてくれない2人に俺から声をかけた。
「離れるってリカちゃん先生引っ越しでもすんの?」
「は?」
「だって今の時期に他の学校に行くのはないだろうし」
何をわけわかんねぇこと言ってるかと思えば、拓海は俺が言ったことを理解していなかったらしい。
「そういうんじゃなくて…」
なんて説明していいか言葉が見つからない。
っていうか、離れるのと別れるのってどう違うんだろう…。俺が思ったのと同じことを歩が聞いてくる。
「兄貴は離れるって言ったのか?別れるじゃなくて」
「うん、まぁ…そうだけど」
「ふうん。それならまだ大丈夫だろ」
いつもの調子に戻った歩がポケットからタバコを取り出す。
相変わらず禁煙は出来ていないらしく、それでも入り口に背中を向けて少し隠そうとしてるから歩なりに気を付けてはいるらしい。
「大丈夫なわけないじゃん。もし桃ちゃんに言われたらって考えてみろよ」
「………とりあえず縛って逃げられないようにするかな」
考えて出した歩の答えは、すげぇ歩らしい。でも実際そうなったら歩はしないと思う。前までの歩ならしてそうだけど、今の歩だったらちゃんと桃ちゃんの言い分も聞いてあげると思う。
「まあそんなの言われるヘマはしねぇけど」
紫煙を吐き出した歩がニヤッと笑った。それを見て、言い分を聞きつつも縛るかもしれないなんて考え直す。
成績が上がっても歩は歩。偉そうでド派手な金髪なのには変わりない。
「なぁ、離れるってどういう意味?」
話に入ってこれなかった拓海が首を突っ込んでくる。今の流れを聞いてもまだわかっていないらしく、俺と歩を何度も往復して見る。
「別れるの一歩手前」
「えっ!!慧とリカちゃん先生別れんの?!」
俺の代わりに歩が答えるけどそこに気遣いなんてなくて、ストレートすぎる言葉にマジでヘコんだ。改めて言葉にされるとかなり辛い。
それに追い打ちをかけるように拓海が別れるのかって聞いてくるから余計だ。
「なあ、マジで別れんの?!なんで?ねぇ、なんで別れんの?」
「…それは俺が聞きたいんだって」
「っつーかさ、お前マジで別れる気なの?お前が兄貴から離れられると思えないんだけど」
2人から別れるのかって聞かれて落ちまくってた気持ちが底辺にたどり着く。
いくら友達だからって少しは遠慮してもいいのに…!!
俺は全く気遣いを見せない2人を睨みつけ言った。
「俺は別れたくないに決まってんだろ!!」
「そう言えばいいだけだろ」
そう答えた歩は続ける。
「あの兄貴が離れようって言ったんなら大丈夫だって。もしお前を手放す気ならアイツは別れるって言うから」
吸っていたタバコを消し、携帯灰皿に捨てた歩が笑う。なんでこの状況で笑うんだって不思議な俺に歩が言ったのは…
「俺さ、お前と兄貴が初めて揉めた時に言っただろ。アイツほど健気で一途なヤツはいないって」
「そうだっけ?」
「言ったっつーの。俺と兄貴が兄弟だってバラした時に」
そう言えばそんなこともあったような…なかったような。いや、あった気もする。
一途で健気なリカちゃん。父さんの話でもそうだった。
「あの時から兄貴は変わってねぇよ。むしろ酷くなってる」
なぁなぁ!とストレート過ぎる拓海が手を挙げた。
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