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どんなに考えても嫌で、本当に苦しくて辛くて涙が止まらない。
もっと一緒にいたい。2人で笑っていたい。
いつも俺だけを見て俺のことを思っていてほしい。
離れたくない。1秒だって離れたくないんだ。
でもそれ以上に俺はリカちゃんを信じたい。
「………わかった、俺はリカちゃんから離れて自分のしたいことを探す」
言葉にしてしまえば、後戻りはできない気がした。きっとリカちゃんはさせてくれない。
やっぱりやめたはもう届かない。
「だからっ………待っててほしい」
本当に待っててくれる保障なんてない。次の瞬間には気が変わってどこかへ行ってしまうかもしれない。
今度はリカちゃんを失うかもしれない。
「お願いだから…待ってて」
「わかった」
一言だけで答えたリカちゃんは俺の涙を唇で吸ってくれる。止めどなく溢れてくるのに何度もそれを繰り返し、目が合ったら微笑む。
「何年も待ってたんだから俺は平気。むしろお前が俺を選んでくれたことが奇跡だと思ってる」
「なに…どういうこと?」
「慧が初めて言ったの覚えてねぇの?星一の墓の前で「これからは俺の為に生きて」って言ってくれただろ」
それは…確かに言った。リカちゃんがいなくなるかもしれないって思ったから。星兄ちゃんの代わりに生きてきたって聞かされて咄嗟に出た言葉だった。
だってああ言わなきゃリカちゃんが消えちゃう気がしたから。
「あの時から決めてた。何があってもこの子の為に生きようって…この子だけを愛そうってずっと思ってた」
リカちゃんはずっと微笑んでいて、これが悲しい別れじゃないって教えてくれるみたいだった。
ううん違う…俺たちは別れてなんかない。
少しの間だけ別々の道をいくんだ。
これからも2人でいる為に、自分の為の選択をして、リカちゃんを信じる為に少しだけ遠回りをする。
「俺、ちゃんと頑張るから…頑張るからっ」
「うん。
俺もお前を心から安心させてやれる男になる」
繋いだ手は少しの間離れてしまうけど…それでも絶対に忘れない。
俺には待っててくれる人がいる。信じたいって思う人がいる。
「お前は何も間違ってない。ゆっくりで大丈夫」
そう言って抱きしめてくれたリカちゃんに頷く。最後に小さく好きだと言った俺に、抱きしめる力が強くなる。
「始まったあの日からお前の為だけに生きてる。お前だけを愛してる」
俺の身体を放したリカちゃんが窓際まで歩いて行く。そして振り返って綺麗な顔で微笑んだ。
「気を付けて帰れよ、兎丸」
いつも俺を見ていてくれて、いつも俺のことを考えてくれて、いつも俺を守ってくれる。
俺の為に生きて、俺を愛してくれる人に向けて俺も答える。
「さよなら、先生」
さよならは別れと始まりの挨拶。今までの自分に別れを告げて、俺は新しい自分を探す。
そして見つけた時には必ず戻ってくるから。
それまでさよなら。
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