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「待ってるって言ったくせに嘘つき」
ジト目で睨み上げる俺にリカちゃんは慌てて否定する。
「嘘じゃないって。本当に待ってる」
「どうせ寄ってきたヤツに良い顔してキープしてんだろ」
「誰がそんなことするかよ…俺のイメージ悪すぎ」
思ってもないことを言って責める俺に「違う」「誤解だ」って返しながらもリカちゃんは俺に触れる手を離そうとはしない。俺の誤解を必死に解こうとしてる姿が新鮮で、緩みそうになる口元を必死に耐える。
「このドエロ。マジでお前の頭ん中はそればっかりなんだな」
「だからそれはお前限定なんだって」
「っつーか、いつまで人の手握ってんだよ。離れようって言い出したのはお前だろうが」
「だって離したら逃げるだろ?誤解は早いうちに解かないとお前の場合は変な方向に考えるからな」
リカちゃんは手の力を抜かないけれど、それ以上は近付かない。この微妙な距離を守ってくれる。
俺が自分から戻るまでは俺の好きなように自由にさせてくれるってのは本当だった。
やっぱりリカちゃんの最優先は俺なんだと思うと、これ以上苛めるのも可哀想な気もする。
睨んでいたのをやめた俺にリカちゃんは少しだけ安心したのか目尻を下げた。
「信じてもらえるようにって言ったのは俺だもんな…お前がそう言うのも仕方ないか」
「珍しく素直だな」
「俺は自分の非は認める男なんだよ」
それはいいことだと思う。
認められちゃったらそれ以上の追求はできない。本気で反省してるのがわかるから、仕方ないかと今回だけは許してやろうと思った。
今回だけはな。
「どうするかな…」
なんとかして俺に信じてもらおうと考えを巡らせるリカちゃんに俺は1つの提案をする。
俺からリカちゃんへの……大きな勝負を仕掛ける。
「じゃあ1つ俺の言う事聞けよ。そしたら忘れてやる」
「わかった、俺の出来ることならなんでもいい」
ここでリカちゃんに戻りたいって言うのは簡単だ。けど、リカちゃんはそれだけは聞いてくれないだろう。
でもって俺もそれは違うと思う。
俺は俺の手であの時間を取り戻さなきゃいけない。
「俺と勝負しろ」
「勝負?」
聞き返してきたリカちゃんに頷く。
「次のテストで俺が全教科70点以上だったら俺の勝ち」
「言うこと聞くってそれ?」
「そうだよ。俺絶対勝つから。リカちゃんは負ける試合はしないっていつも言ってんだろ」
「そうだけど…」
リカちゃんは勝負事に絶対に負けない。でも俺もこの賭けに負けるつもりはない。そして、何があってもリカちゃんに乗って来てもらわないと困る。
今までの俺じゃ無理だったことをやり遂げて認めてもらいたいからだ。
「いいよ。なんでそんなに自信あるのか知らねぇけど乗ってやる。約束だしな」
「よし」
「で?お前が勝ったらどうすんの?勝ちました、で終わりじゃないだろ?」
当たり前だろって答えた俺はリカちゃんのネクタイを引っ張った。すぐ触れる距離で、あえて触れずに告げる。
「俺が勝ったらお前の1日寄越せ」
「1日っていつだよ」
そんなの決まってんだろバカ。12月だぞ。12月の大事なイベントって言ったら1つしかねぇだろ。
リカちゃんの甘い匂い。こんなに強く感じたのは久しぶりで、本当は今すぐギュッてしたい。けどまだそれは先だ。
「12月24日…覚悟してろよ俺はやるときはやるんだからな!」
覚悟の意味をリカちゃんはどうやって捉えたんだろう。
詳しいことは言わない俺と、聞かないリカちゃんの間に沈黙が流れる。
「わかった」
繋いでいた手を離したリカちゃんが目線に合わせて小指を出した。
「約束」
「そんな寒いことするかバーカ」
「だよな。お前はそういうヤツだった」
指切りの代わりにリカちゃんの肩を小突いた俺はそのまま部屋を出る。
色んな話を聞いて色んなことがあったけど……でもまた1つ何かが変わった気がした。
今まで生きてきて、ここまで必死になったのは初めてかもしれない。今の俺なら空だって飛べるんじゃないかって思うぐらい無敵な気分だった。
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