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「もういいだろ。戻るぞ」
うさぎを置いて立ち上がったリカちゃんがリビングへと消えていく。追いかけた先のテーブルにはさっき作ってくれてたご褒美があった。
「あり合わせだけど」
そう言って目の前に置かれた皿には綺麗に巻かれたクレープ。薄い生地に包まれているのはフルーツと生クリームで、あの短時間で店顔負けのコレを作ってしまったリカちゃんはすごい。
それなのにうさぎが無いと眠れないとか誰が想像するだろう。俺しか知らないリカちゃんだ。
かぶりついたクレープにはチョコレートのソースもかかっていて、入ってるフルーツは俺の好きなものばかり。
あり合わせが俺の好物って……本当は用意してたんじゃないのかって疑ってしまった。
美味いクレープを食べながらリカちゃんを見ると目が合って指が伸びてくる。
「クリーム付いてる」
口の端に付いていた生クリームを親指で拭い、それを迷わず舐めとる。
「あっま…」と眉を顰めてまた俺を見た。
「どうした?」
「いや…なんでもない」
「変なの。まだ甘さ足りない?」
充分甘い。クレープもだけどリカちゃんの言動と雰囲気が甘過ぎる。あまりにも甘過ぎて酔いそうになるくらいだ。
俺たちって別れてはないけど距離を置いてるんだよな?でも最近はそれすら忘れそうになる。
「兎丸、何飲む?」
けど呼ばれた名前にそれを思い出し気持ちは落ちる。
「ココアかコーヒー…は飲めないからホットミルクか」
「ココア」
答えた俺にリカちゃんは自分の分のコーヒーと合わせて用意してくれた。そのマグカップは2人が色違いで使っているやつだった。
「リカちゃんって頑固だよな」
「は?」
「俺よりも頑固だと思う」
どこからどう見ても俺のことが好きなくせに、あの日の約束を守って待ち続けるリカちゃん。
俺が困ってるから何かしてやらないとって思うリカちゃん。
俺がいなきゃ眠れなくて苦しくて泣いちゃうリカちゃん。
完璧だけど完璧じゃない。強いけど弱い。
「お前に言われたくない。くだらないこと言ってないで食べ終わったなら続きするぞ」
「また勉強か……し過ぎで死ぬかも」
「俺がお前を死なせるわけないだろ。そうなったら天国までついて行ってやる」
サラリと言われたセリフに思わず噎せた。背中を摩ってくれるリカちゃんを睨む。
「お前は地獄だろうがな」
「なんでだよ。俺ほど善良な人間はいない」
どこからその自信が来るのか真顔で返してきたリカちゃんに呆れつつ、俺は勉強を再開した。
もちろん厳しい先生はその手を緩めることはなく涙ながらに問題を解く。
間違ってたら2回目までは教えてくれる。3回目はボロクソ言われる。けど合ってたら「よく出来た」って褒めてくれる。
あれだけ苦労して諦めた問題。それを最終的に1人で答えが出せるようになったんだから、やっぱりリカちゃんは完璧だ。
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