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お互いの額を合わせると、伏せられた目元で揺れるリカちゃんの睫毛に透明な粒が乗っていた。
「俺はお前が思ってくれているような男じゃない。簡単に弱気になるし、本当は自分に自信なんてない」
上目遣いで見上げてもリカちゃんと目が合わなくて、何を考えて何を思ってるかわからない抑揚のない声が淡々と続く。
「お前には嘘をつかないってずっと言ってきたのにな。今じゃそれすら嘘になっちゃってごめん。俺はお前にそのままの自分を見せて拒絶されるのが怖い」
「そのままの自分ってリカちゃんはリカちゃんだろ。無駄に格好つけて強がってるのをやめろって言ってるだけじゃねぇか」
顔を離したリカちゃんが周りを見回した。誰も来ないのを確認して俺の手を握る。ぎゅっと瞑った目…眉間に浮かんでいる皺が深くなった。
「俺以外がお前に優しくすると、そっちに行っちゃうんじゃないかって不安だって言ったら?頼るのも相談するのも、怒るのも笑いかけるのも俺じゃないと気が済まなくて全部俺であってほしい。そうじゃないと必要とされていない気がして凄く…怖い」
俺は自分で束縛してる自覚があるし依存してるってのもわかってる。そんな俺にリカちゃんが付き合ってくれてるって思ってた……んだけど。
「俺すっげぇ重たいんだって。依存するし、束縛どころかそのうち監禁でもしかねない」
そう言ったリカちゃんは、からかう顔じゃなく真剣だった。真剣な顔して冗談みたいなことを言ってきやがる。
「監禁…って大げさな」
呆れる俺にリカちゃんが首を振る。
「冗談じゃなく本気だからな。誰にもバレずに連れ去って閉じ込める自信がある」
笑いながら完全犯罪を成し遂げるリカちゃんを想像して納得した。リカちゃんなら束縛越えて閉じ込めそうだ。でもって俺はそれに怒るけど心のどこかで喜んじゃう気がする。
俺の人差し指を握ったリカちゃんが、まだしつこく聞いてくる。
「でも本当にいいのか?お前の理想は何でも出来て何でも知ってて、欲しい物をくれるやつだろ?」
「なにそれ。いつ俺がそんなこと言ったよ」
……リカちゃんが実はバカだってことは薄々気付いてたけど、正直ここまでバカだとは思わなかった。
俺は、握られていた指を包み込む冷たい手を見た。自分よりも大きな手のひらに大きな身体、俺よりもずっと大人のくせに中身はすっげぇ子供だ。
そんな大きな子供はまだ納得していない。
「リカちゃんすごいって言う時のお前、嬉しそうな顔してたし。ああいうの見せられるともっと理想に近付きたいって思う」
「……だから理想って何」
「そうすればもっと好きになってもらえる。また俺を選んで貰えるって頑張れる」
いつも不安にさせてきた俺が悪い…それは認める。確かに俺が悪いんだけどイラッとした。
自分だって俺に秘密ばっかり作ってたくせに俺が言わないからって変に勘違いして、勝手に俺の理想とか決めつけてドツボに嵌るとかバカ以外の何物でもない。
「俺はお前の為に理想通りの完璧な男にならなきゃいけない」
バカで頑固なリカちゃんに俺の怒りメーターが溜まっていく。それは俊足で頂上まで上がり、簡単にスイッチが入った。
「黙れ」
急に低い声を出した俺を不思議そうに見るリカちゃんをキッと睨む。
「黙れって言ってんだよ!!ぐだぐだ鬱陶しい!!!!」
驚いた黒い目が見開いて俺を映す。その瞳には我慢の限界を一瞬で越えた俺がいた。
「誰がそうしてほしいって言った?俺が1回でもそんなこと言ったか?!俺はリカちゃんが好きだつったんだよ!もしお前が俺の理想だったら俺はどうかしてる!!」
こんなに性格悪くて頭の中は変態で、それでいて隠し事ばっかしてる男が理想とかありえない…ってか、そもそも同性の男が理想とかおかしいだろ?
視線でそう訴える俺にリカちゃんは手を引こうとする。そこに俺は力を込めて爪を立てる。
「い、痛いんだけど」
「約束するなら放してやる」
「約束…って何を?」
「もう二度と勝手に俺の理想決めつけんな!そういうことするから面倒くせぇ勘違いすんだよバーカ!!今度また意味わかんないこと言ったら踏み潰すぞてめぇ」
爪跡が付くほど強く握り、持ち上げた膝で股間を押す俺にリカちゃんが眉を顰めながら頷いた。
「わかった、約束する。約束するから」
「絶対か?嘘は?」
「俺はお前に嘘はつかない」
その言葉が聞けたら満足だ。上げていた足を下げるとリカちゃんがホッとため息をついた。
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