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「もっとしていい?」
「もっと…って」
「もっと深くって濃いの。駄目って言われても止めらんないけど」
唇を噛まれて驚けばその隙間からリカちゃんの舌が入り込んでくる。
激しくも荒くもない、さっき言った通りの深くて濃いキスに夢中になりそうになって、ここがどこだか思い出しその背中を叩く。
「ゃっ、誰か……来ちゃうってば」
暗いと言ってもここは外だから誰にも見られない保証なんて無い。それなのにリカちゃんは舌の動きを止めずにもっと深くまで入ってこようとする。
クチュリと鳴る水音と合わさる吐息混じりに俺の名前を呼んで、俺を見る。
「別に見られてもいい。何も悪いことはしてない」
「でも」
「こんなに幸せな時に他なんて構ってられるか」
俺の唇を吸って溜まっていた唾液を嚥下したリカちゃんが嬉しそうに笑う。なんだかそれを見てると苦しくなって視界が滲んだ。
やっとなんだって思ったらもう止められない。
「泣くなよ」
「お前がっ……悪いんだろ。お前がっ」
「ごめんって。もう離さないって約束するから許して」
チュッと啄むキスを繰り返し謝るリカちゃんに、今度は俺の方が我慢できなくてもっと深いのを求めてしまう。甘くて濃厚なキスに夢中になっていると、遠くから声が聞こえた。
誰かが来たことがわかって身体を引こうとした俺をリカちゃんは許してくれない。
「リカちゃんっ……誰か来、ぁっ」
「見なくていい。こっちに集中しろ」
「無理だって!む、んぅっ」
吸われた舌先が痺れて声が上がる。俺の両耳を塞いだリカちゃんが至近距離で見つめてくるのを感じながら俺は縋りつく。
大きな手のひらで覆われた耳。リカちゃんしか移さない瞳。周りの全てが遮断された世界には俺とリカちゃんしかいない。
キスを一旦止めたリカちゃんは覆った手の隙間から直接耳に声を送り込んでくる。
「ほら…これで何も聞こえないし俺しか見えない。お前は俺だけを感じていればいい」
俺は平凡に静かに、そして穏やかに生きていきたかった。大きな波のないのんびりとした普通の生活を送りたかった…けど。
「慧」
俺を呼ぶ声、視線、指。それを知ってしまったらもう戻れない。きっとコイツからは逃げられない。
「俺は慧の為に生きたい。それが叶うなら他に何もいらない」
俺の世界で1番大切なヤツは、今日も名前を呼んだだけで嬉しそうに笑う。
「すごく。すごく幸せ…ありがとう慧」
やっぱりリカちゃんは、いつだって綺麗だ。
綺麗だけど強引だ。
「ひぁっ」
急に舐められた耳。縮こまって震える俺に覆いかぶさったリカちゃんにはもう周りなんて見えてない。俺しか移さない黒い目が閉じることはない。
「やっ…あっ、やだ!」
「愛してるよ慧君」
「だめ、だめだって!リカちゃん、もうっ」
耳に舌を這わせ、囁き続けていたリカちゃんが服の上からそこに手を当てた。ニッと薄い唇が半月を描く。
「やっばぁ…慧君ってばキスと声だけでイっちゃいそう」
「あ…ふぁ……やっ、やだ」
過敏に反応しすぎる身体。それに気付いたリカちゃんに助けを求めるように手を伸ばす。早く、早くどうにかしてほしくてねだるように見上げた。
「可愛いなぁ…もう堪んない」
「リカちゃんっ、これ!」
反応しちゃった股間をリカちゃんに押し当てる。それは助けてほしいって意味だった。
けれど忘れちゃいけない。俺の恋人は俺様リカ様…意地悪の王様だってことを。
「おねだりは嬉しいけど駄目。しばらくお預け」
一瞬にして妖しい雰囲気を消したリカちゃんが俺の膝の裏と背中に手をかけ、周囲を確認することもなく持ち上げる。
その目が身体を丸めて蹲る俺を見下ろして…なんでリカちゃんのスイッチが入ってることに気付かなかったのか自分を責めてももう遅い。
「おとなしく待てが出来たらご褒美やるから。ちょっとの間我慢な」
「ちょっとってどれぐらい?」
「んー……ここからだと8時間ぐらい、かな」
絶望に打ちひしがれる俺に軽くキスを落としたリカちゃんが足を踏み出した。俺たちにとって新しい関係が始まる第一歩。
ここから2人の時間がまた刻まれる。
車まで抱きかかえてくれたリカちゃんが俺を助手席に降ろす。シートベルトも締めてくれて、扉に手をかけてこちらを覗き込んできた。
吹っ切れたらしいリカちゃんがキラキラして笑う。やっぱりこの顔に弱い俺はドキッとしてしまうけど、出てきた言葉は全然キラキラなんかしていなかった。
「どうしても出したいんならそこで1人で抜けよ。BGM代わりに聞いててやるから」
そう言われても、そんな事できるわけない。流れるように発進させた車の中、不機嫌な俺の隣で楽しそうに運転を続ける隣の男に文句を言って睨みつけた。
「鬼!悪魔!!性悪!変態!!」
「またまた。そんな俺が好きだって、本当の俺が欲しいって言ったくせに慧君のワガママ」
「それとこれは違う!」
車内に怒鳴る俺の声とリカちゃんの笑い声が溢れる。
…本当のリカちゃんがいいけど、もう少しドSは抑えてほしいって言えば良かったと後悔した。
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