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手に取った封筒はすっげぇ薄くて軽い。
「開けてみろよ」
リカちゃんに言われて封を開ける。その中から出てきたのは、同じく薄い紙だった。
「これ……って、え?!」
そこに書いてある文字を読んだ俺はリカちゃんを見る。ふっと笑ったリカちゃんが俺の手に自分のそれを重ねた。
「冬休みになったら連れて行ってやるって約束しだだろ?」
「でもっ、ここは…」
「雪が見たいって言ってたから」
手の中にあるのは飛行機のチケット。行先は……
「これ日本じゃない…んだけど」
「うん。どうせなら本場の方がいいかと思って。せっかくパスポート作ったんだし有効活用しない手はないだろ」
そのチケットの行先は雪で有名なあの国で出発は30日だった。
「年末年始の休み使って5日間だけな。移動時間は長いけど、それだけあれば色々周れるから」
「5日ってそんなに仕事放っておいて大丈夫なのか?」
「何の為に毎日残業したと思ってんだよ。お前は余計な心配しないで楽しみにしてたらいいの」
リカちゃんが俺の額をピンと弾く。テストと進路相談とで忙しかったはずなのに、それに加えて裏でこんなことまでしてたなんて思いもしなかった。
修学旅行前に話した何気ない会話を覚えてて実行してしまうところとか…ずるい。
「なんでそんなことまで覚えてんの?あんなのただ適当に言ったことなのに」
「俺がお前の言ったこと忘れると思う?お前が何が好きで、どこに行きたいかなんて絶対に忘れない」
「それならさっきの年越しどうするって聞く意味ねぇじゃん…」
「だってこれは俺が勝手にやったことだし。お前に他の予定が入ってたら諦めるしかないから」
ここまでしておいて諦めるって選択肢がまだあることに驚いた。また俺の好きなようにさせてくれるつもりだったリカちゃんが、こめかみへと触れるだけのキスを落として言う。
「今年最後の慧君と来年最初の慧君は予約済みってことで」
「なにその言い方…」
「1番最後に見るのも、1番最初に見るのもお互いがいいなって思っただけ」
握った俺の手に頬を当てて、そのままの姿勢で見上げる。上目遣いで俺を見たリカちゃんがの目尻が下がって、優しく甘い声で「慧」と俺の名前を呼んだ。
わかりきっているくせに返事を待っているらしい相手に向かい、その頬を抓った俺は答えた。
「……来年だけじゃなく、その次もその次の次も、次の次の次もずっとお前にやる」
リカちゃんが首を傾げる。
「慧君、それってプロポーズ?」
「なっ!なんでそうなる?!」
「そうとしか思えないんだけど」
「違う‼!」
きっぱりと否定した俺にリカちゃんが「良かった」と呟いた。それに少しだけ傷ついた心が、次の一言で急浮上する。
「先越されたかと思った」
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