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day 1 ④
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「カ、ラ…松」
「気持ち悪いのか?立て…そうには見えないな、乗れ」
余裕が無くていつもの戯れを忘れると察しの良いのか悪いのか、筋肉馬鹿の兄は余計心配するような顔をして駆け寄って来た。
たかが酸素不足と吐き気程度、マスクを外して放っておけば直に治る。
そんな思考回路を持ち合わせていない残念なカラ松は階段付近でうずくまる僕に背を向けてしゃがみ、何か言った。
「何…」
「歩けないんだろう。背負って連れて行くから、乗ってくれ」
「…」
…そこまで大事では無い。
いくらコーヒーカップが比にならないくらい振り回されたといっても、流石に目が回るのも落ち着いてきたから何とか歩けるし。
それにこの気持ち悪さは気持ち良いから放って欲しいんだけど。
そんな事を吐き気を抑える口を開いて言える訳も無いし、殴れもしないから黙って迷っていると、カラ松が寂しげな笑みを浮かべて僕の方を見て真面目な言葉で言った。
「…一松、俺がお前を日々困らせているのも、怒らせているのも、それが原因で嫌われてしまっている事も分かってる。背に乗りたくないのだって知ってる。だが、ここには生憎俺しか居ない。だからどうか、俺に弟を助けさせて欲しい。」
「…」
「後で殴ってくれて構わない。元気になったら、いつもの調子を取り戻したらいくらでもいいから、だから」
カラ松は痛々しいほど純粋だ。
純粋過ぎて何かする度にイライラするっていうどうしようも無い僕の心的な都合で一方的に殴っているのも、全て自分の所為だと信じて疑わないし、こんな屑なのにいつまでも弟として扱う。
優しいなんて言葉じゃ足りない。
俺が殴っても決して殴り返して来ないし、おそ松兄さん以外の兄弟に手酷く扱われても泣くことしかしない。
無視されてもし返さないで独りで呟くように嘆くだけ。
しかもその多くが誰もいない所だ。
それを知ってるのは、僕も其処に居るからだけど。
そんな寂しがりの兄をまた僕は傷付けた。
「…違、う」
「…?」
「嫌い…なんて、思って…ねぇ、から」
「……!そうか、そっか、ありがとう。一松」
絞り出した声でそう応えて首に手を伸ばし、筋トレを欠かさない背中に身体を寄せた。
それを確認して重い身体を簡単に浮かせる兄はただ温かい。
ゴミみたいな僕の所為でまた深く傷付けられたのに、それを常に表に出さないように努力する。
”努力”だから時には出てしまうけど、その不完全さが捻くれた僕には丁度良くて。
だけどクソ松はいつもズレててそこの修正は面倒臭いと思ってる。
だからと言って怠ったりはしない。
そんな思いで訂正したのを聞いてやけに喜んでるのを見て頭にフォークでも刺したくなった。
疲れたからしないけど。
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